第22章 お兄ちゃんのお見舞い
しのぶさんから、
入浴の許可はもらっていた。
でも傷が開いていて
お湯に触れると痛かったから
ずっとかけ湯をするだけにとどめていた。
本当はゆっくりと浸かりたかったけれど。
傷口はきれいにしないといけないから
滲みるのを我慢して
なるだけ刺激を与えないように
ゆっくりお湯をかけるのだけど
お湯の入った重たい桶を持ち上げると
手首が悲鳴を上げるのでもの凄くツラい。
正直言って、手伝ってもらいたいのは
お皿の片付けではなくかけ湯の方だ。
でも、
肩にお湯をかけてもらえませんか?
…なんて、そんなこと言えるわけがない。
故に私は、出来るだけ少ないお湯を入れた桶を
何回にも分けてかけるという
とてつもなく時間のかかる作業を
繰り返し行うしかないのだった。
「大丈夫だったか?
フロ場で倒れてんじゃねぇかと心配したぞ」
「…すみません。桶を持つのがツラいんです」
正直に打ち明けると
「それくらい俺に言えよ」
合点がいったように目を見開いた。
それが出来れば苦労はしません。
「お前の裸くらい見慣れてるっつうの」
「……」
む。
何だろう。
癪に触るその言い方は。
まるで私の裸なんか
大した事ないみたいな言い方じゃないか?
「どうせ珍しくもない、新鮮みに欠けた体ですよ」
聞こえない程度の声で…
何なら口の中で言ったくらいの勢いだったのに
「そういう意味じゃねぇだろ」
吐き出すように返されて…。
もう、この人の耳はどうなってるんだろう。
私も私だ。
あんな余計なことを言葉にして。
すっかり片付けられたテーブルの前に
ゆっくりと座ってため息をついた。
お風呂に入ったというのに、
気持ちいいよりも疲れが先にくる。
早く、良くならないかなぁ…
そう思ってのため息だったのに、
勘違いした宇髄さんは
「お前が恥ずかしがって素直に言えねぇなら
言えるようにする為の気遣いだったんだよ」
言い訳のようなことを言い出した。
……
「…いえ、そんなこと…」
そんなことを気にしているわけではない、と
誤解を解こうと振り返ると、
伸びて来た手が私の襟元をとらえ、
ぐいっと押し開いた。
「…⁉︎」
突然夜着を乱されて、
私は焦りを隠せない。
「宇髄さん…!」