第22章 お兄ちゃんのお見舞い
「心配しなくても帰ったりしねぇよ」
ぽんぽんと頭を撫でてにっこりと笑う。
「……」
「……」
黙って宇髄さんを見つめる私を
彼も見つめ返し…
「…え?何、マジでそういうイミ?なの?」
驚きを隠せない宇髄さんは
身を乗り出して私に問う。
改めて訊かれると、どうにも答えづらい。
私にはスムーズな誘惑は出来ない。
どうしても照れが邪魔をするから。
だから私はズルをした。
この人がどっちに受け取るか、
答えを彼に任せるような言い方をわざとした。
私自身、本当はどうしたいのかも
よくわからなくて。
「……」
何も言わずに、ふっと背けた顔。
そのほっぺたを両手で包み
宇髄さんは優しく引き戻す。
「これでもすっげぇ我慢してんだけど」
熱の籠った瞳が間近に迫った。
「その俺に、そんな事を言った責任は重いぞ」
私は慌てて目を伏せる。
自分からけしかけたくせに
極端に緊張する私を見て、
「…お前そんなんで、よく誘惑する気になったな」
多少呆れたような声に変わった。
「誘惑、した、と思った?」
「この状況でまぁよく言う。
思っ切りされたけど。撤回は認めねぇ」
「うぅ…」
「今夜はずっと、だったか?」
さっきの私の言葉を反芻し
ニヤリと妖しげに笑った宇髄さんは
「お望み通り…」
優しい口づけを私にくれた。
何度も交わす甘い口づけに酔わされて
恥も何も無くなった頃、
お互いの事しか考えられなくなった私たちは
もう欲望のままに求め合うだけ。
私を気遣いながらの交わりがあまりにも幸せで
いつもなら早々に音を上げる私が
際限なく求めてしまい
彼の方を困らせてしまったのだった。
☆彡