第22章 お兄ちゃんのお見舞い
少し考えた睦は
俺の機嫌を損ねた根元に行き着いたらしく
ひらめきの表情だ。
「変な意味はありません…」
「当たり前ぇだろうよ。
そんなモンあったら俺は今頃狂ってるわ」
「狂ってるって…そんな大袈裟な」
睦は何でもない事のように
ころころ笑っているが
あながち冗談ではないのだ。
こいつはそういうとこニブい。
でもまぁ今回は…
いろいろあったしなぁ。
不死川にも世話んなったし、
睦自身、
あいつに感謝しても仕切れないだろうし
大目に見るけど。
「ほら、片付けはしといてやるから
フロ行って来い」
「えぇ、片付けくらいやります。
少ししかないし」
テーブルの上に広がるカラの皿を見て
少しだけ気合いを入れた睦が
それらに手を伸ばす。
「やめとけ。まだ力、入れにくいだろ」
「…」
なんでわかるの?
そう目で訴える睦。
ナメんなよ。
と、軽く睨むと
「普通にしてたつもりなんですけど…」
「俺の目はごまかせねぇのー。
どんだけお前のこと見てきたと思ってんだ」
まったくしょうがねぇ女だ。
自分の価値をわかっちゃいねぇ。
「いいからほら」
早よ行けと促すと、
「はぁい、ありがとうございます」
そう言いながらぎゅうっと首に抱きついてくる。
「お?どうした珍しいな」
酒は飲ませていねぇはずだがな…?
大きく腕を回して
背中を抱きしめてやると
「ふふ…すごく嬉しくて」
「ん?片付けをサボれる事が?」
「あ、もう違いますよ」
いじけたように俺の肩を揺さぶった。
「宇髄さんが居てくれるからに
決まってるじゃありませんか」
勢いで、いつもなら照れて言わない様な事を
さらりと言ってのける。
可愛い女。
「わかってるよ。さぁ行って来な。
俺が居る時なら落ち着いて入れるだろ?」
「はい」
にこっと嬉しそうにして
ゆっくりと立ち上がった。
「…まだかけ湯だけにしてるか?」
何となく訊くと
「はい。でももう傷も塞がったし、
そろそろいいかなって…」
肩の辺りに手を置いて
少しだけ視線を落とす。
「…そうか」
「…行ってきます!」
踏ん切りをつけるように元気な声を上げ
睦は浴室へと向かって行った。