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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第22章 お兄ちゃんのお見舞い





黙って、その手をただ抱きしめている私を
じっと待っていた不死川さんは
そのうちもう片方の腕を伸ばして
背中をとんとんと叩いた。

軽く抱きしめられたような感覚にハッとして
最後にきゅっと力を入れて握る。

「不死川さん、また来てくれますか?」

「また…?」

「はい。元気そうに見えて、
まだ外を歩き回れるほどではないんです…
会いたい人にも上手く会いに行けなくて
淋しくて…。
でもまた会いに来てくれる人がいるって思うと
希望が持てるから…」

「…そういう事なら…」

不死川さんは、私から手を取り返して

「また来てやるからな」

しっかりと私の目を見て、
わざとかなと思うほどはっきりと言ってくれた。
その優しさに、私は知らず
涙を零してしまっていた。














アレはもう、浮気の域だと思う。

俺の女が他の男の手を取り、
それを胸に抱きながら
また会いにこいと
次の約束を取り付けるという悪夢。

その光景がまさかの、
俺の目の前で行われるというこの恐怖。

睦にはそんな気が微塵もない。
だから平気でそんな事をする。
だが、そんなモンを見せられた俺側は
平気でいられるわけがない。

口も挟まず、よく耐えたと
世界中から褒めてもらいてぇモンだ…。

そのうち不死川は
睦を抱きしめるようにして
背中をとんとんし出すし
睦が流した涙を見て
またあの見たこともないような
やっさしい笑顔を咲かせるし…

…まるで恋人同士の別れ際だな。
アレで気持ちがねぇのが不思議なくらいだ。

去りゆく不死川の背中を見送っていた睦が
小さなため息をつきながら俺の横に収まった。
そしてそのまま、
コテンともたれかかる。

「…なんだ、どうした」

あ、やべ。
不機嫌丸出しの声だ。

案の定ぱちりと目を開き
俺の顔を見上げる睦。
焦ってわざとらしく笑顔を作る俺を
観察する様に眺めながら、

「……いえ、
…お客様を迎えるのが久しぶりだったので
ちょっとだけ…」

その先を言うのをやめて、

「…機嫌悪いですよね?」

こっちを先に解決させたくなったらしい。
はーぁあ…。

「あんなトコ見せられりゃ気分悪ィだろ。
機嫌も悪くならぁ」

「……あぁ!今の?」


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