第22章 お兄ちゃんのお見舞い
睦の腕を覆う着物の袖を捲り、
きれいに巻かれた包帯を解きにかかる。
最初は自分で巻くのが下手くそで
苦戦していたというのに、
手慣れたものだ…。
「あ、それお風呂の後に…」
何で今取っちゃうの?と顔に書いた睦が
不思議そうな声を上げた。
「ん、あぁ悪ィな。俺が直すから。
ちょっと確認だけさせてくれ」
ケガの具合の確認をするためとは言え
大事な睦の肩を
不死川の前に曝すわけにはいかない。
最後のひと巻きをはらりと抜き去り、
現れた睦の手首。
最後に俺が見た時には
まだ赤黒く爛(ただ)れたようにひび割れていたが
もう皮膚は再生していて
傷はすっかり塞がっていた。
少し痛々しさは残るものの
本人はもうどうってことはなさそうだった。
そこを見た不死川は、
ホゥっと肩から力を抜き、
ぽんと睦の頭の上に手を乗せて
「睦…よかったなァお前…
俺みてえになったらどうしようかと思ってた」
眉を下げ、脱力し切った笑顔を浮かべた。
写真にでも収めて、
一生からかってやりたくなるような
優しい笑顔だな。
睦がこいつを優しいと言うワケだ。
「よくがんばったなァ睦」
がしがしと少し荒っぽく髪を撫でる不死川に
うんうんとただ頷き、
涙を堪えていた睦は
それを隠したかったのか、
それとももう堪えきれなくなったのか
不死川の腹に抱きついた。
んー……
今だけ許してやろうかな。
日暮れ前から準備した夕食。
食べていけと、
何故か宇髄さんが不死川さんを誘い
引き止めた結果、残ってくれる事になった。
そんなつもりじゃなかったのにと
それでも満更でもなさそうだった。
これは、夜を迎えるにあたって
私に気を遣ってくれたとしか思えなくて。
申し訳ないような気もするし、
でもやっぱりありがたくて
私は腕によりをかけて夕食を振る舞った。
宇髄さんは少しだけお酒をひっかけて。
不死川さんは相変わらずお茶。
『いつ何があってもいいように』だそうだ。
その意味が、今の私にはわかってしまう。
それを思うと…胸の傷が少しだけ疼く。
でもこの場で
悲しい顔を見せるわけにはいかなかった。