第22章 お兄ちゃんのお見舞い
「…ご迷惑をかけられた覚えはねェ」
プイとそっぽを向く不死川に困った睦が
助けを求めるように俺を見る…。
「……」
…いや、俺を見られてもなぁ。
仕方なしに
ぽんぽんと頭を撫でてやり、
「迷惑じゃねぇってさ」
「…んー…」
「睦の事なら喜んで助けに行くってよ。
どうせならもっと可愛く言やぁいいのになぁ?
さねみん、照れ屋さんだから許してやってくれ」
「さねみん…?」
「黙れよ宇髄てめェはほんっと余計な事しか言わねぇよなァいっつもよォこらァ‼︎」
そんなモン
いつもの照れ隠しだと分かり切っている。
だが1人激昂し出す不死川は
ひと息で長い悪態をついた。
俺は睦の肩をそっと引き寄せ
自分の胸にもたれかけさせると
「ほらな、すぐ照れる」
耳元に手を添えて内緒話。
「聞こえてんだよ!」
「聞かせてんだよ」
ここまでムキになるのは
この場に俺がいるからだろうな。
睦と2人きりだったら
もっと優しく話すことができるんだろう。
その証拠に、
「…不死川さん…怒ってますか?」
睦がそんな事を訊く。
ひどく不思議そうに。
「俺の知ってる不死川は
いっつもあんなんだがなぁ?
睦は違うのか?」
睦がなんて答えるか、
それを聞いて不死川がどんな反応を見せるか、
見ものだなー。
「違います…。もっと優しいんですよ?
目つきや言葉はキツいけど…でも
そんなの気にならないくらいの優しさが
溢れてるんです」
「睦待てェ…それ以上口開くなよォ…」
不死川は血走った目を見開いて
睦の言葉を止めようと凄むのに
「えぇ⁉︎私ほめてるのに!
今日は何でそんなに機嫌が悪いんですか?」
当の睦にはまったく効果はない。
睦の調子も戻りつつある。
いい事いい事。
そしてこの2人の掛け合いが
めちゃくちゃおもしろい。
期待以上だ。
あの不死川が、
睦に押され気味な所が最高だ。
「俺のことなんかいいんだよ!
今日はお前の様子見に来ただけだァ」
不死川が本来の目的を思い出してしまった。
仕方ねぇ。
「睦、手ぇ貸してみな?」
俺が片手を差し出すと
そこに自分の手をちょこんと乗せて
小さく首を傾ける。