第3章 意路不倒
「…何を、するんですか?」
なんとなく想像できたけど、
その想像を否定してほしくて訊いてみる。
そんな私の問いかけを無視して、
何事もないように、ひょっと跳び上がる。
「…っ!」
その瞬間、すごい圧がかかり、
ジャンプしたんだって事がわかった時には
2人が乗って耐えられる中で1番高い枝の上にいた。
眼下には、私の暮らす町が広がり、
遠くに延びるは隣町。
山の向こうまで見渡せる。
私は見た事のない景色に、心震わせた。
「景色はいかがですか、お姫サマ」
宇髄さんはいたずらっぽく訊いてくる。
「……え?」
…白昼夢だろうか。
いつか、夢で見たような…。
何だかここに来た時から妙な違和感がある。
それが何なのかまではわからなくてもどかしい。
「ん?」
優しく微笑む宇髄さんに、我にかえる。
「…あ、すごいです!鳥になったみたいです」
私はまた、景色に目をやった。
「きれいですねー!空が近くなりました!
こんな高い木に登るの…」
と、私はつい、真下を見てしまった。
その高さに、目が眩む。
急激に、恐怖が襲う。
「う…宇髄さん…高い…」
ガチガチに固まった私を見て、
「…おい、危ねぇから、動くなよ?」
「う、うごけない…ですよ」
彼に近づいて、しがみつきたいけど、
それすらも怖くて、羽織の肩あたりを握りしめるのが関の山。
「…下りるか?」
「…はい」
そう返事をした途端、
まるで階段の、最後の一段をぴょんっと飛び下りるくらいの感覚で、そこから地面に下りる宇髄さん。
「っ‼︎」
私は声を上げる間もなかった。
ゆっくり下ろしてもらうが、
私の足は震えて上手く立てずその場にへたり込む。
「大丈夫か?」
「はい…。あぁ…景色は最高でした」
私が笑うと、宇髄さんも笑った。
「それは良かったな。
でも睦、高い所なんて平気だろ」
「そう思ってました。でも今、怖かったぁ」
子どもって高い所好きな子多いよね。
でも大人になると変わるのかな。
余計な知識がつくからかな。
だとしたら、子どもの方がきっと楽しいな。
地面を感じて安心したのか、
私の足の震えも落ち着いて来た。
「すみません、もう大丈夫です。
ありがとうございました」
私は立ち上がり、歩ける所を見せた。
「ん、なら良い。さ、帰るか」