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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第3章 意路不倒




「確かに…そうですよね」

それにしても、

「何かの練習か何かでしょうかね?」

「そうかもしれねぇな」

…随分そっけない言い方。
わがままに付き合わせて機嫌悪く、しちゃったかな?

「ごめんなさい。長居して」

「ん?もういいのか?」

「はい。ありがとうございました」

この人のご機嫌を奪ってまでここに居なくてもいい。

「ホントはもっと見たいだろ?」

「…いいんですか?
宇髄さん、嫌じゃありませんか?」

「別に嫌な事ねぇ。
せっかく来た懐かしい場所だろ?
どうせ来たんだし、気の済むまで。
まぁ昔より草はひでぇが」

察しがいい上にやっぱり優しい。

「ありがとうございます」

お言葉に甘えて
庭の奥にも行ってみる。
この地面に、いろんな絵を描いた。
住んでみたい家や、着てみたい着物。
すぐに消えてしまうけれど、
たくさん描いた気がする。

大きな木はまだ元気みたい。
あそこに登って町を眺めたっけ。
幹に触れて、見上げてみる。
…こんな大きな木に、1人で登ったのだろうか。
…私すごいな。
今となっては、とてもじゃないが無理だ。

「どうした。…その木はまだ元気だな」

「そうですね。
私、この木に登った気がするんです」

「ヘェ」

「…登れると思います?」

私が訊くと、少し悩んでみせる。

「…んな事わかんねぇな。
登ろうと思や登れんじゃねぇの?」

それを聞いた私が、その木に手をかけると
慌てて私の肩をつかんだ。

「おい睦!お前今登る気か?」

「え、その気になったらホントにできるのかなって…」

試してみたくなったのだ。

「お前な、そんなキレイなおべべ着て木登りする二十歳が何処にいんだよ」

呆れたように言う宇髄さん。
…くそぅ。

「…ここに」

「アホ」

「……はい」

私は何も言えず木から手を離した。

「何だよ、登りてぇのか」

宇髄さんが気遣わしげに訊いてくる。

「いえ…。登りたいというか。
1人で登れるものかどうか試してみたかっただけです。…でも、あんな高い所からの景色、見てみたい気もしますね」

私が木を見上げて言うと
小さく息をもらした宇髄さんが、

「…つかまっとけ」

私の身体を片手で掬い上げる。
突然の事に驚いて、反射的に彼の首につかまった。

宇髄さんは煩わしげに、自分の着物の裾を払った。




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