第22章 お兄ちゃんのお見舞い
「あァあァ、そうだよ、見舞いだなァ!
てめぇが早々に帰したりするから
気になってしょうがねぇや」
「あれ?俺が悪いみてぇになってる?」
「当然だろうがァ。
あいつ、
まだ1人にできるような状態じゃねぇだろう」
ギロリと睨まれ、プイッと逸らされた。
……
「不死川さぁ、
…お前どんだけ睦のこと可愛いの?」
「はァ⁉︎」
目をひん剥いて胸ぐらを掴まれる。
血走った目が怖ぇのなんのって。
つうかさぁ…
「動揺しすぎだって」
笑わずにはいられなかった。
怒りでごまかして見せたって
睦の事を可愛がっているのは明白だ。
それをなぜ隠す必要があるのか。
答えはひとつ。
恥ずかしがり屋サンだからだ。
それを言ったらヘソ曲げるから
絶対ぇに言わねぇけど。
「睦を家に帰したのは
あいつが望んだからだ。望んで、
俺がそうしても大丈夫だと判断したからだ」
「だからってなァ…」
「あぁ、だからって、
帰してハイ終わりなんて事しねぇよ。
俺は毎晩通ってるし、
こうやって気にかけてくれるオニイチャンも
ちゃんといるしなぁ?」
さっき文句を言いかけた不死川は
遮った俺の話を聞いて口をつぐんだ。
そしてちょうどいいことに
ぴったり睦の家の前だ。
睦の背丈くらいの垣根を抜けて
2人、玄関の戸の前に立つ。
俺は磨りガラスをはめ込んだ格子戸を
軽く叩いた。
ガシャガシャと硬い音が鳴り
風の揺れでない事は伝わったはず。
しかし、
どれだけ待っても
睦が戸を開ける事はなかった。
「…留守、なワケねぇよなァ?」
「…ねぇだろうな」
もう昼を過ぎている。
買い物なら午前中に済ませるよう
散々言い聞かせておいた。
店も休ませてある。
この時間に、
睦がでかけるはずがなかった。
俺はふと、垣根の向こうに目をやる。
小さな庭のある方向だ。
「不死川、そっちそっち」
言いながら垣根の隙間に
大きな男を押し込む。
「オイてめぇ何しやがる!」
「そっから庭に行けるんだって。
絶対ぇ縁側でボーっとしてやがんだよ」
睦のいつもの傾向として、
ひとつの可能性を見出した俺は
不死川ごと庭へと侵入した。
そうして先に入った不死川は
「……」
黙り込む…。