第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
それに気づいた天元は
目を見張り腰を浮かせた。
「来ないで!大丈夫だから!」
片手を開いてストップをかける。
乗り越えるの。
負けたくない。
大丈夫になるんだから。
私のそんな強がりを感じ取って
「あいつなりの、詫びだ。
お前が食えるようになったと知らせたら
睦の為に今朝焼いたんだと。
やっと焼かせてもらえるようになって
嬉しいんだろうな。
別人のように働いてんだ」
あの男の近況を話し始めた。
…別に知りたくないけれど。
「お前の事があってすぐに町にやったんだ。
俺がガキの頃から良くしてくれる夫婦がいて
そこの店に厄介になってる。
人間らしさを学ばせようと思って」
「人間らしさ…?」
「あいつは人格形成がされる前に
王子であることばかりにこだわって
おかしくなったと思うんだ。
だからそんな事よりまず
人間になってもらおうと」
「…ふぅん」
「毎日のようにお前の様子を訊いてきたよ。
謝っても謝りきれねぇって」
「…毎日、通っているのね」
私がつい、何の気無しに思った事を口にすると
「……いや、…そんな事ねぇわ」
バツが悪そうに目を逸らした。
…あら。
「別に責めてるわけじゃないけど…」
それにしても、…。
「…楽しくやってるわけだ。
私をあんな目にあわせておいて、」
「…睦…」
「……よかったね」
「……」
良かった。
心から。
「あんな目をしなくて済むのなら良かったよ。
人を恨まずに楽しく過ごしていられるのなら
そんなに幸せな事はないし、
…天元も、よかったね」
ぽかんとしている天元に、
私はつい笑ってしまった。
「あんなのが弟じゃ、気が気じゃないでしょう?
なんだかんだ言って
優しいお兄ちゃんだもんね?」
何で知ってんだとでも言いたげに
ちょっと頬を染めて
「お前こそ、あいつのこと恨んでねぇの?
あんな事になって。
…ごめんな、ほんとなら俺が…」
「あれは飲まされたんじゃないのよ?
私が望んで飲んだんだから、
謝られることじゃないの」
「だってあん時、俺を助ける為に飲んだろ」
「知らなーい。そんな事よりコレおいしいわ。
がんばってるんだね、」
落としたフォークを再び手に取り
もうひと口頬張った。