第1章 嚆矢濫觴
「お前ら、仲いいのな」
私たちの様子を静観していた宇髄サンは
感心したように言う。
いつのまにか宇髄サンもおだんごを頬張っている。
「そうですよ!
睦ちゃん、とっても可愛いんですもの!」
そう言って蜜璃ちゃんは、
私をぎゅっと抱きしめてくれる。
ちょっと痛い。
この子はちょっと力が強い。
でも、そう言ってもらえて嬉しかった。
「ありがとう蜜璃ちゃん。
私も蜜璃ちゃん大好きよ」
そう告げると
目を潤ませて喜ぶ彼女。
そんな事をしていると、
店員さんが大量のお皿を運んで来てくれる。
それにまた、目を輝かせる蜜璃ちゃんは本当に
可愛らしくて、私はつい笑顔になってしまう。
宇髄サンも、
蜜璃ちゃんのこういう所が好きなのかな、
なんて思って、
ふと、宇髄サンの方を見ると、
ばちっと目が合ってしまって、私は面食らう。
それは宇髄サンも同じだったようで、
思い切り顔をそらされた。
…はいはい。
まったく…私はほんとに、何でここにいるのかな。
2人で来ればいいじゃないの。
私にやきもちやかれても困るんだけど。
「睦ちゃん!
はい、もう1つどうぞ?」
そう言って、追加で頼んだ桜餅を差し出してくれる。
「蜜璃ちゃんの分でしょ?」
あなたの分を取ってしまうのはしのびない。
「あら、一緒に食べるからおいしいのよ!」
蜜璃ちゃん!
何ていい子なの‼︎
「ありがとう蜜璃ちゃん!
何だろう、蜜璃ちゃんやっぱり大好き」
「いやん!嬉しい!」
いつもと同じ桜餅も、いつもよりおいしく感じる。
すると、
目の前の宇髄サンは、呆れたような目で、
「お前ら、気持ち悪いくらい仲良しな」
私たち2人を見ている。
悪意を感じた。
…私の楽しみにしていた時間を邪魔した上に、
何故こんな嫌味を言われなくてはならないのか。
「私と蜜璃ちゃんが仲よしで、妬いてます?」
「え…睦ちゃん⁉︎」
私の言葉に険を感じたのか、
蜜璃ちゃんは少し慌てたように言う。
だって、今日は私と蜜璃ちゃん、2人の約束だった。
なのに、私がないがしろにされたみたいで、
少し悲しかったんだ。