第1章 嚆矢濫觴
「…んな事ねぇよ」
宇髄サンもカチンときたのか、そっけなく答えた。
…だめだ。
せっかくの楽しい雰囲気を壊してしまう。
「そうですか、それは失礼しました。
ごめんね蜜璃ちゃん。
ちょっとお店に忘れ物した事を思い出したの。
先に行くけど、いいかな?」
私の急な申し出に、
「え?え?そうなの?う、うん、わかったわ!」
戸惑いつつも承諾してくれる。
「これ、私の分」
そう言って私は、
少しばかりのお金をテーブルに置いた。
それを見て、蜜璃ちゃんと宇髄サンは驚いている。
「おい、睦…」
「あ、…睦ちゃん、今日は…」
「ごめんね急に。
蜜璃ちゃん、また誘ってね」
私は何かを言いかけた2人の言葉を遮ってそう伝えると、宇髄サンの目も見ず頭を下げて、
私は店を後にした。