第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
「淋しいよ。でもそれは
たくさんの人に踊りを見てもらえないからで…
私の話、わかってくれてる…?」
「はい、もちろんです!
大好きな事が出来なくなった上に
愛しい方にお会いになれないなんて
それは悲しくなってしまいますよね…
わかります!」
「イトシイヒトなんて居ないんだって…」
「またまた。すぐ照れるんだから睦様は」
だめだ。ジャナは手に負えないかも…
でもおかげで涙も止まったし、
後はお腹いっぱいご飯を食べよう。
ハニートーストは私好みの程よい甘さだし
ドレッシング嫌いな私でも食べられるくらい
サラダはおいしいし、
多分手作りしたこのヨーグルトはなめらかで…
言うことなしに美味しい。
食べ物って、
お腹を満たすだけじゃなく心も癒やしてくれる。
あぁ、幸せだ…
こんな幸せも、…考えたくないが
あの男のおかげ…
と思えば、少しは許せるような気がしないでもない。
たくさんおしゃべりをして、
お腹いっぱい食べて
心もいっぱいになった私は
暮れてきた空をまた見上げていた。
夜って淋しいなぁ…
せっかく満たされた気持ちも
一瞬にして攫っていってしまう。
バルコニーに出て、
きれいな透彫の手すりに頬杖をついた。
まだ茜色に染まる西の空。
そこに煌めく一番星を見つめて
「はぁ…」
と、大きなため息をついた…、その時。
「睦!」
大きな声と共に
これまた大きな影が部屋に入って来た。
シンと、
静寂しか聴こえなかった空間を破られて
私は必要以上に驚いてしまったと思う。
私の元に足速にやってきて
隣に立った途端、覗き込むように背中を丸めた。
「…なんだ睦、そのシケたツラは」
開口一番がそんなセリフか。
「失礼な…。物思いにふけってる女にいう言葉?」
「俺が来たんだ。もっと喜べ」
…問題外だ。
「ん?物思いに?…なんだ、悩み事か?
何でも聞くから、全部話せ」
片手を手すりに掛けて顔を近づけて訊く。
…話してなんかやるもんですか。
ぷいと顔を背ける私のほっぺたを捕まえて
「おい、話せ。
俺が解決してやれるかもしれねぇだろ?」
真剣な目を間近に寄せてくる。
こんなに近くでこの目を見ていると、
いつぞやの忌まわしい時間を思い起こしてしまう。