第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
あー私はぼんやりしすぎだ。
しっかりしなくちゃ…。
夕食も湯浴みも断った私は、
相変わらず自室に篭っていた。
夜の帳が下りていくたびに
どんどん気温も下がっていき
私の体温をうばっていく。
灯っていく街の灯が美しい。
輝く月も、煌めく星も
何もかもが私の目を喜ばせるというのに、
心はちっとも晴れなかった。
身体が重たい。
心も重たい。
胸の隅に、何か黒いものがとどまっている。
それは何なのか、わかっていた。
さっきのアレだ。
大嫌いな男に、身体を暴かれた。
ものすごくいけない事をしたような気になった。
でも、あの男は私を助けてくれたのかもしれない。
だって私の内に籠った熱を解放してくれたのだ。
私ひとりだったらどうしていいか
わからなかったに違いない。
しかも無理矢理犯すような事はしなかった。
優しく、してくれた…
……いや、いや待て。
そもそもあの男がここに現れなければ、…
そしてあんな花を持ってこなければ
こんな事にはならなかったんじゃないだろうか?
何が優しくしてくれた、だ!
騙されないぞ。
私は厚手のベールを頭から巻きつけて
部屋の奥へと入った。
今日はもう眠ってしまおう。
何も考えずに済むように。
明日には、スッキリ起きられるように。
滑らかなシーツにくるまって
私は静かに目を閉じた。
広い敷地は、隅々まで手入れが行き届いていて、
すべてが完璧だった。
美しい装飾品も、色鮮やかな花たちも
大きな椰子も。
それぞれの道のプロが集結したとしか
思えないような美しさだった。
私は出口を探していた事も忘れて
庭園の美しさに見入っていた。
広い敷地。
迷路のような小径を抜けると
一際豪華な作りの場所に出た。
柱にも壁にも、細かいレリーフの入った
タイルが貼られていて
特に心惹かれたのは天井のムカルナス。
直にこの目で見たのは初めてだ。
あぁ、…ここはいけない気がする。
豪華すぎて、
私などが足を踏み入れていい場所じゃない。
くるりと踵を返すと、
「あら、あなたは…?」
鈴を転がす、とはこの事。
涼やかで凛とした美しい声が私を呼び止めた。