第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
「あのね、ちょっと休めば大丈夫だから。
ただ食欲はないの。ごめんなさい」
「っ!いえ!とんでもございません!
腹痛などございませんか?」
あぁ、やっと落ち着いてくれた。
「うん、どこも痛くないよ」
安心させるために微笑んでみせる。
どこかホッとしたようなジャナは
「レモン水などお作り致しましょう。
さっぱりしますから」
そう言って
お昼に届けられた果物の山の中から
レモンを手に取った。
…レモンを食べろという事だったのだろうか。
随分と変わったチョイスだ。
レモンをそのまま食べる人は
なかなかいないと思うけれど…。
まぁ、そのまま食べる人だっているだろうけど。
「…ジャナごめんね。
他の人から何も言われてない?」
「え?」
「私ずっと引きこもってるから…。
先の奥方様たちのお付きの人から
つつかれたりしてない?」
初日から不貞腐れていた私は
先の3人の奥方様にご挨拶すらしていない。
その事を、
周りから厳しく言われているような気がしたのだ。
「いいえ、何もありません。
この後宮の中の方たちは
睦様を含め良い人ばかりで…」
にっこり笑うジャナ。
「それなら、いいんだ」
手際よくレモン水を作っていくジャナを
ぼんやりと眺めていた。
「…ねぇ、あの男はどんな人?」
なんとなく私が訊くと
ぎゅっと眉を寄せて
「またそんな言い方を…」
ひと言ぼやいてから
「王子様はとっても優しくて男らしくて
素敵な方ですよ?
民のことを1番に考えて下さる方です」
……
「そんな人が、こんな人攫いのような事をする?」
「人攫い⁉︎何をおっしゃるんですか!
見初められたという事です。
名誉ある事ですよ?」
「名誉…名誉ねぇ」
そんなモノ、私にとっては何の価値もない。
「睦様、あのお方の事を
もっと知るべきです。
きっと睦様の事を
幸せにして下さいますよ?」
出来上がったレモンを差し出しながら
ジャナは力説する。
「そんなこと言われても…」
もうすでに幸せなんかじゃない。
不幸から始まっている関係だ。
「せっかくの機会です。
色々知ってからでも遅くはありませんよ」
にっこりと笑って見せるジャナは
別人のように美しくて
うん、と頷いてしまうほど。