第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
「睦。…あの日、
広場の真ん中で踊っていたお前は
最高に素晴らしく、そして美しかった。
自分のモノにしたいと思った。
俺の元に来ればお前はもっと
幸せになるモノだと思っていた。
でも実は、それを俺が手折った、
という事なのか?」
殊勝な声。
横柄な王子はやっと気がついたようだ。
「俺の所に来た途端、お前はにこりともしねぇ。
ってことは……そういう事なんだな」
叱られた犬のよう……
まるで別人だ。
この人は、こんなになってしまうんだ…
何だか可哀想になってきて、
つい、視線まで戻してしまう。
それに気づいた彼は
私の胸の内を窺うように見つめてきて…、
あーあ、私も大概ばかなのだ。
「そういうこと。あなたは私の事なんて
何にも知らないし、
私だってあなたをまったく知らない」
それなのに好きだ何だと…。
戯れ事だ。
何も心に響かない。
「私の舞が気に入ったのなら、
いつでも舞ってあげる。だから
こんな所に押し込めたりしないで」
この際、言いたい事をすべてぶちまける。
「いやだ」
「えぇ…?」
いやだ…?
「それじゃお前は俺のモンにならねぇだろ」
「…」
…何て?
こんな、子どもみたいな人なの?
ちょっと、思ってたのと違った…。
「…あなた王子様でしょう?」
あまりの衝撃に、
つい失礼な事を訊いてしまう。
「何が言いたい」
急に低まった声。
さすがに気分を害したようだ。
でも、私だって引く気はない。
「うわべだけでなく、ちゃんと相手を見て。
相手をよく見極めもせずに
後宮に引きずり込むなんてどう考えてもおかしい」
「言ったはずだ。お前の素性は…」
「素性……じゃあ気持ちは?」
「好きだぞ、睦の事」
……
「私の、気持ちは?」
この人の気持ちはおいといて、
では私の気持ちはどうなるのだろう?
「お前も俺を好きだろう」
…あぁ、そういう了見か。
「好きじゃない。
あなたのこと知らないし知る気もない」
「何でだよ」
私の体を囲うように付かれた両腕。
その腕が、私を抱きしめようとしたのがわかった。
そうさせる気もないが、
さっきの薬のせいなのか
今度はひどく眠たくて…。