第21章 スルタンコラボ企画 〜睡蓮の昼寝〜
「そうだな。その通りだ。
ではその花、処分するとしよう」
私の手から花束を勝手に奪おうとする。
それを回避すべく、スクッと立ち上がり
自分に用意された部屋へと向かった。
「花にも命はあります。
人の勝手でその命を絶たれたのでは
あまりに可哀想です」
まるで私のようだと思った。
生きながらに、殺されたも同然だ。
「ではどうしろと?」
私の後について立ち上がった王子は
興味深そうに息を呑んだ。
「女に贈るものは時間を割き
自らの目で選び、心から贈りたいと思った物を
見極められるのが当然かと」
「‼︎」
『この花は……お前の為に』
あの言葉のマ。
あのマは、
自分から来ようと思ったわけではない事を
物語っていた。
この男に近しい誰かが気を利かせ
王子に持たせたものに違いない。
3日間放置された私を、
王子の側近あたりが憐れんだのだろう。
私は大きな天蓋布の裏にある
サイドボードに飾ってあった花瓶に
花束を生けようと思った。
「ジャナー、水をちょうだい?」
いきなり声をかけられたジャナは
大慌てでお水を持ってきた。
「ありがとう」
にこっと笑って言うと、
ジャナもニコッと笑い返してくれる。
その様子を、
王子は目を見張って眺めていたが、
「…おいお前、下がれ」
ジャナに向かって一言…。
ムッ…
「彼女にも名はあります」
気に食わない。
私はこの男のすること全てが気に入らない。
「アイシャ以外の女の名などどうでもいい」
はぁー?
「好きだ」
はーあ?
「ジャナ、どうもありがとう。
今は下がってもいいよ」
下がれと言ったこの男の
手助けをするわけじゃないが
友達だと思っているジャナが
この男の言いなりにさせられるかと思うと
腹が立って仕方がなかった。
「はい。失礼致します」
王子にも私にも頭を下げて
ジャナは静かに出て行った。
私はどこかホッと胸を撫で下ろし
渡された花束の形を整え生けた。
その私の姿を、まるで品定めでもするかのように
腕を組み柱にもたれながら眺めている。
…何のつもりだろう。
「俺からの贈り物、随分と大切に扱うんだな」
意外そうに目を見開いた。
…おめでたい人だ。
それともわざと言っているのか。