第20章 旱天慈雨
雛鶴さんとまきをさんと須磨さん。
優しくて明るくて、
あの人たちも間違いなく私の心の支えだ。
なんて、ありがたいんだろう。
「その報告によれば、
あの女中はお前とは無縁。
他人の空似だ」
……。
私の、記憶が曖昧になっているのだろうか。
「…おんなじ顔してた…のに?」
「そうだな。お前があそこまで取り乱す程だ。
そりゃあそっくりだったんだろう」
私が言ったことを頭ごなしに否定するでもなく、
認めてくれながらも事実を伝えてくれる。
「でもあいつらの腕は信頼できる。
間違いはねぇよ」
「…うん。疑ってるんじゃないよ…?
自分の記憶も、もしかしたら
曖昧になって来てるのかなぁって思って…」
そんな話を聞かされたら、
ちょっと自信がなくなってくる。
「…勘違いしたのかなぁ」
あの顔を忘れるわけがない事をわかっていながら
私はそう思いたくて言葉にした。
「そうだといいな」
それがわかっているかのような
ちょっと笑いの含まれた声。
ばかにしたのじゃなくて
果てしなく優しい…。
目の前に据えられた瞳も
なんて愛しみに満ちていることか。
「少しは安心したか?」
耳に届いているはずの声が
全身に沁みわたっていくみたい。
ほぼ無意識に瞼が下がっていく…。
「…私もうだめかも」
「は…?」
「あ…」
また口に出ちゃった…!
ぱちっと目を開くと
やけに真剣な瞳とぶつかった。
誤解させてしまった気がする。
…気がする、では済みそうもないほど
真面目な表情だ。
「あのね、そうじゃ…」
なくて、と言いかけた所に
「だめなんかじゃねぇよ」
彼が言葉を被せてくる。
「睦は出来る事をちゃんとやってる。
周りの人間の事もしっかり見てるし
みんなに好かれてる。
昨日の事も解決したわけだから、
気に病む事はなにもねぇんだよ」
あぁああ誤解ですぅ…
「…ごめんなさい…」
でも、
「ありがとう…」
そんなふうに思ってくれていた事を知って
感極まってしまった。
溢れる涙を親指で拭いながら
「何がごめんなんだ?ありがとってお前…
なんで泣いてんだよ」
困ったように眉を寄せる。
「だって違うのに…、
天元がそんなこと言うから…」
「違うってどういう事だ」
勘違いなんだって。
私は、自分がダメかもなんて言ったんじゃなくて…