第20章 旱天慈雨
「ごめんね…止まらないの…
謝ってほしいわけじゃないの…」
「わかってる。でも、淋しかったろ…?」
「…うん…ごめんなさい…淋しかった…」
弱々しくしがみつく私を
力いっぱい抱きしめてくれる。
この温かさに、どれだけ救われただろう。
「睦が謝ることじゃねぇ。
何だよ…いつもみたいに怒れよ…」
苦しそうに言って、
私の顔を覗き込んだ。
涙に濡れた頬を拭うように
彼の熱い唇が触れる。
「…私が、謝ることだよ…
いつまでもこんなんでごめんなさい…
傷ついたでしょう…?」
「睦…」
わかってるんだ。
「あなたが隣にいるのに、私…」
「許す」
私の言葉を遮って天元が言った。
…ゆるす、と。
まだ何も言っていないというのに…。
「だからもう言うな。
俺はお前がする事なら何でも許す。
お前が悪い事なんかひとつもない」
「……」
更に涙を溢れさせる私を見て
「おいおい…泣かす為じゃねぇんだよ…」
困ったように眉を下げる。
仕舞いには微笑みすら浮かべて、
「しょうがねぇなぁ…」
ぽつりと呟いた後に、
優しく口づけをされた。
あなたって人は、
またそうやって私を甘やかすの…
「いつまで経ってもお前を埋めてやれねぇ。
俺にも責任はある。
他なんかメじゃねぇくらい、
上手に愛してやれたら
お前を悩ませる事もねぇのになぁ…」
「っ⁉︎…やだ‼︎そんなこと言わないで!」
噛み付く勢いで叫んでしまった。
目を見張った天元は、
一瞬後にはまたあの微笑み。
「天元は悪くないのに!
これ以上ないくらいに良くしてもらってる!
それなのに…そんなこと言っちゃやだよ!」
もう、縋りついて泣くしかなかった。
「落ち着け!
そんなつもりで言ったんじゃねぇよ…
これから、そうしてやるからな…?」
言葉通り、優しく笑ってくれる。
あぁ、私の勘違いだった?
いつまでも私がこうなのは、
天元のせいじゃないって、事だよね?
そんなふうに絶対思われたくない。
「これから…?」
「そう、この先の話だ。
こんな事が、もうねぇのが一番いい。
でも無いとも限らねぇだろう?
その時には、俺の愛が
お前を包み込んでやれてるといいと
心から思うよ」