第20章 旱天慈雨
私が目を覚ましたのは宵の口。
ひとり、きっちり布団の中にいた。
薄暗い部屋に、小さなライトが灯っていた。
心を落ち着けてくれるそのライトは
私が作ったステンドグラス風。
天井や壁を彩るそれは
私のお気に入りだ。
風の音がしない。
物音もしない…。
なんだか…ひとりぼっちだ。
もしかしたら、みーんな消えちゃって、
この世で私しかいなくなっちゃったのかも…
…それもいいかなぁ…
そんなバカな事を思いながら目を閉じる。
なんだか疲れちゃった…
昔あったことも、振り回されるのも。
無かったことには出来ないのだから、
せめて『大丈夫』になればいい。
今の私には
愛する人が、そばにいてくれるのだから…
そうだ。
彼がいてくれれば、
もういいんじゃないかな。
だいたい、よく考えたらだよ?
居るはずがない。
なぜあんなに取り乱してしまったのか。
今考えたら、ちゃんちゃらおかしい…
「起きたのか?」
優しい声と共に、愛しい温もりに包まれた。
あぁ…
「この世に私ひとりだったはずなのに…」
想像の世界に浸っていた私が
つい心の声をもらすと、
「バカ言え」
呆れたような一言を言い放つ。
なのに、
「…ごめんな、ひとりにした」
急に切ない声を出した。
1人で目覚めるのが嫌いだなんて我儘を、
私が言ったばっかりに、
この人はひどく敏感になってしまった。
でも、ほんとに嫌いなの…
ひとりぼっちを思い知らされるみたいで…
「どこ、行ってたの…?」
「んー…お前の、メシの支度。
今日なんも食ってなかったろ」
申し訳なさそうにそんな事を言う。
そんなの、許さざるを得ない…
責められない。
「ごめんて…」
この人が謝る事なんてない。
だって私のそばを離れる事が
罪になどなるはずがないのだから。
私は首を横に振って
「ごはん…なぁに?」
わざと違うところに話を向けた。
「握り飯。鮭の」
それは…私の好きなやつだ。
「睦…。
そうだよな、ごめん…泣かないでくれ」
よしよしと髪を撫でられる度に
私の目から零れる涙。
それを止めようと天元は必死だ。
でもそんな事をされると、
こっちこそ悪い事をしているみたいな気になって…