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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第20章 旱天慈雨





どこらへんがありがたかった?
難しい…

なんてひとり悶々としている所へ

「失礼致します」

と、ひどく冷静な声。

「……おぉ…」

返事と同時に開く襖。

「天元様、昨日の件ですが…」

淡々と報告を始めようとする雛鶴…

「なぁ、絶対ぇわかってるよなぁ?」

昨日といい今日といい、
タイミングが良すぎるとは思わねぇか。

「…何の事でしょう?」

怖ぇ怖ぇ。
笑顔が怖ぇ。

「ごまかすな」

「何の事やら」

だってそうだろう。
行為後の、
しかも睦が眠りに落ちた直後だ。
昨日もそうだった。

「見計らってんの?」

「とんでもございません。
まさかそんな失礼なこと…」

「じゃ窺ってんのか」

「その方が失礼ですよ。
そんな趣味、私にはありませんし」

「どうだか…」

「睦さんの可愛らしいお声なら
聴こえたような気がします」

雛鶴は悪気の無さそうな笑みを作った。

「お前なぁ…」

「私のせいじゃありませんよ?
まさかこんな日の高いうちから
色事に耽っていらっしゃるとは思いませんもの」

「それは悪ィことした…
でも、…必要だったんだ」

何となく、眠る睦に目を落とす。
それに気づいた雛鶴も、
少し哀しげに睦を見やった。
雛鶴からは睦の背中しか見えてはいない。
今日はちゃんと襦袢を身につけているし
特に隠す必要もない。

「…おつらかったでしょうね」

「過去の事だ。…今は、俺がいる」

と、言い切れねぇのもツラいとこ。
俺がついていながら、
あそこまで取り乱したわけだから。

「天元様は、睦さんの
唯一の心の支えです」

俺の心に気がついた雛鶴が
慰めの言葉をくれる。

「…ふ、」

つい笑った俺は

「ありがとな」

それでも礼を述べた。
まさか、慰めてもらえるとは思っていなかった。
おかげでいくらか心も和らいだ。

「…で?」

「睦さんは、大丈夫ですか?」

様子を窺うように覗き込む。

「あぁ、こいつはまだ目ェ覚まさねぇ」

きゅっと抱き寄せた。
それでもちっとも動かねぇ。
すやすやと寝息を立てるばかり。

「そうですか…?」

雛鶴はひと呼吸おいてから

「昨日の件ですが…」

慎重に言葉を運んだ。




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