第20章 旱天慈雨
抗体のねぇ睦は
あわあわと目を白黒させていた。
俺の言葉に困惑するのも当然か。
でも、コレいつまででも見てられるな。
こんな事だけで、
こんなに可愛くなっちまうものなのか。
いいコト知った。
「そうやって俺に埋もれてるのも可愛いし。
あ、この小せぇ手も愛しいな。
握ると守ってやらなきゃ、
って気になる。あとは…」
「待って、まだ言うの⁉︎」
狼狽える睦を放置して俺は続けた。
「お前から来ると、俺の指つかむだろ?
ちゃんと手ェつながれるより愛しい。
あれされると…」
「いい!もういい…っ」
睦は俺の口を両手で力いっぱい塞ぎ
「なに…なんなの、今度はなんの罠?」
体も声も震わせる。
「罠…。俺が罠仕掛けてばっかだと思ったら
大間違いだぞー?」
細い手首を掴み上げると、
なぜ俺が突然そんな事を言い出すのか
わけがわからず戸惑いの表情を浮かべる。
「じゃあ何?さっきから…」
挙動不審もいいとこ。
睦はまともに目を合わせようともしない。
「んー…あんま言ったことなかったしな。
俺がお前のどこを好きか、
思い知らせようかなと思っただけだ」
「思い知らせるって…
もう充分わかってるからいいよ」
「うーそつけ。充分わかってんなら
そんな照れることあるかよ」
「照れてない」
強がってみせるが
まったく信憑性がない。
「はいはい。…そういうこと言うから
可愛く見えてくるんだけど?」
「…っ…それは、知らない」
お、さすがに『可愛い』には
多少の抗体があるらしい。
…これだけ言い続けてやっとかよ。
「だってお前、自分のいいとこ
ちっともわかってねぇだろ?
俺がお前のどこが好きかなんて
考えた事もねぇだろ」
「自分の、いいところ…?」
ふと、遠い目をした。
そうだろうなぁ…。
「俺は睦が好きなんだぞ?
俺が、お前のいい所を1番知ってる」
「……」
やっと俺のことを見た。
情けない表情に、つい笑ってしまった。
「どこのどいつがお前を悪く言うか知らねぇが
睦はいいとこしかねぇ」
肘枕をして、
少しだけ体を離してみる。
俺の今の言葉を
こいつがどう受け止めるのか…。