第20章 旱天慈雨
「…何で、」
すん、っと照れを引っ込めて
睦はひどく不思議そうに
俺を見上げた。
「何で急にそんなこと言い出したの?」
素直に心をひけらかす。
…俺の憂慮など必要なかった。
今の睦は、
なんて、心穏やかなのだろう。
「急か?」
「だって、今までそんなこと
言われた事なかったもの…」
「そう、だなぁ…」
思っていたが、言わなかった。
でも、今言わなきゃならねぇような気がしたんだ。
「ちゃんと伝えないといけねぇと思った。
…何でだろうなぁ。今更、と、思うか?」
互いの鼻先を触れ合わせると、
「そんなこと思わない…でも、びっくりした」
本当は照れてるくせに
照れてないふうを装ってみせた。
「びっくりさせるようなこと言ってねぇし」
「えぇ?言ったよ…」
「んな事ねぇだろ」
「……」
無言、って事は、
いまいち納得がいっていないということだ。
「…目が、ぱっちりしてて
しかもまつ毛もばちばちで、
日に透ける栗色の瞳がすげぇきれいだ」
「…え?」
「ちょっと低めの鼻も可愛い。
紅を引かなくても、赤い唇…しかも
形もよくて小さくて、…なのに
物を食う時はでっかく開くとこも可愛い」
「て、天元!待って、何を…」
慌てて止めに入るも
俺にはそんな気はまったくない。
「それから、日に当たった事あんのかと
思うほど真っ白い肌はお気に入りだし。
髪はツヤがあっていい香りがする。
あぁ肌なんかもっといい…甘い香りがするし、
しかも…これ言う気なかったんだが、
極秘だがな…」
ちゅっと小さな口づけを落としてから
「お前の胸、俺の手に丁度よくて
ふわっふわですっげぇいい」
耳元で吐息と共に囁いてみる…。
睦は無言で呆けてから、
「……」
俺の事をぼけっと見つめた後に、
「なんっ…の話し!」
顔を真っ赤にした。
…すっげぇ予想通りの反応。
おもしろいくらい俺の手の上。
「お前のカラダの話し」
今まで、可愛いだの愛してるだの
散々言いまくってきたってのに、
容姿を褒めた事はあまりなかったような気がする。
だから、意識的に褒めてみているのだが。