第20章 旱天慈雨
「…そうかよっ」
それならと、
俺は睦の体を腕で抱え、
そのままくるりと反転させた。
「う、わぁ…っ」
今度は俺が睦の上に乗っかる体制。
驚いて目を見張るばかりの睦は、
声も出ない様子。
「これなら満足か?」
「…う、ん…?」
いつものように小首を傾げ
少し考えてみせる。
こいつは仕草が可愛いなぁ…。
今更、か。
「……」
そのまま考え込んで、
俺の首に腕を絡めた。
「……?」
「……何してんだ?」
「んー?んー…」
そのうちよしよしと
髪を撫ではじめ、仕舞いにゃ頭を抱きしめ
睦の肩に押し付けられる…。
「睦?」
されている事に文句はねぇが、
意図する所がわからねぇ…。
「どうかしたか」
「ほんと…重たくないねぇ?」
「は…?」
重たくない?
そりゃあ、そうだろうよ。
全身を預けてるわけじゃねぇからな。
なのに睦ときたら
「重たいけど、愛しいねぇ」
まるで子どものように無邪気に笑う。
それがあまりにも愛愛しくて…
たまらなくいじらしく見えて
「お前はよぉ、ほんとに…
どうしようもねぇな」
全身の力を抜いてのしかかってやった。
「や、重たぁ!」
「可愛すぎんの!何が愛しい重さだ。
俺の愛はこんなモンより重てぇと思えよ?」
「えぇ⁉︎…く、ふふ、あはは、重たーい!」
急に大声で笑い出した。
「おーおー…どうした睦」
些か驚いた俺は、
そんなに面白ェことしたかなと
自分の行動を思い返す…。
が、そんな事した覚えはなかった。
「だって、ちょっとも動けないんだもん…
ふふふ、すごいね…ぷくく…」
少し堪えるように
それでもコロコロ笑う。
笑いのツボが謎だ…。
でもまぁ…こいつが笑うのに
何の問題もねぇか。
それにしても…
「睦、笑うのか…
なぁもう、笑えんのか」
急激に安心した俺は
本格的に脱力してしまう。
もういい。
俺は、…いい。
無意識のうちに、…
まっったくの無意識のうちに
睦の唇を塞いでいた。
たったの今まで
笑い声を上げていた睦は
小さく息をのみ
全身を強張らせている。