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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第20章 旱天慈雨





お母さんがいた?
いや、そんなモンいるワケがねぇ。
いた所で、それがどうした。

さっきの女中…?

睦がこんなになる程
瓜二つだということか。
世の中には、人間がごまんといる。
似ている人間がいたっておかしくはねぇだろう。

それにしたって
この乱れ方はいただけねぇ…。

「お願い離して!すぐに追ってくる!」

俺の腕からすり抜けようと暴れる睦を
力尽くで押さえ込む。

「追ってなんか来やしねぇよ!」

「いやだ!怖い…っ」

「睦!おい…!」

「痛いのはもういやだ…っ」

「誰もそんな事しねぇ!」

「だってさっきのお店に…!」

「…そうか。じゃあ例えば、
お前のいう通り、そんな人間がいたとしてだ、
…俺がお前に近づけさせたりしねぇよ」

睦はぴたりと息を詰めた。

頭ごなしに否定するより、
睦の言い分を認めてやって
それをどうするかを提示してやった方が
効果的だろう。

「……帰る。ねぇうちに帰りたい!」

恐怖に支配された睦は
ひどく取り乱していて
どうやって落ち着かせてやろうかと
頭を悩ませていた。
でもとりあえず、

「あぁ、そうだな。帰ろうな…」

こいつの願いを叶えてやろう…。



無事、屋敷に戻り
睦の疲弊ぶりに
ひどく心配する雛鶴たちを
申し訳ないが何とかやりすごし、
俺の部屋でふたり
静かに過ごしていた。

一言も話さない睦は
小さく肩を震わせながら
キツく俺に抱きついている。

…こんな姿を見ているとなぁ…

「睦…。怖ぇか?」

返事の代わりに
更に強く抱きついて。
俺はため息しか出ねぇや。

「…可哀想に。睦、なぁ?」

そう、確かに可哀想だ。
…だが。

「だがなぁ…」

そう続けた俺を
睦はおもむろに見上げる。
涙に濡れたその目を見つめて、

「俺は、もう妬ける」

もう一度、大きくため息をついた。
何を言ってんだと
睦はこれでもかと目を見開いた。

…そうだろうなぁ。
俺の言ってる意味がわからねぇだろう。



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