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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第20章 旱天慈雨





「睦どうしたんだ急に…。
ほら、ゆっくり吸ってみな。
苦しかったなぁ?もう、大丈夫だからな…」

だいすきな人に抱きしめられて、
何からも守ってもらった気でいるくせに
それでも私は、
すべてを遮断したくって
そのまま意識を手放していた。












一歩近づく毎に、
睦の異常さを知った。
遠くから見ているだけなら
ただへたりこんだだけのように見えたが、
耳に入る呻き声。
地面に手をつき項垂れる姿は
ちょっとした精神異常者だ。

ぶるぶると震えている全身。
ひっきりなしに発せられる呻き声。

こいつをこんなにした物は何なのか。
まったく思い当たる節はなかったのに。

あまりに痛々しい姿を
見ていられなくて
俺は思い切り睦を抱きしめた。

過呼吸に陥っている睦。
喉の奥をひゅっと鳴らして
焦ったように酸素を取り込もうとする。

「ゆっくりだ、大丈夫…俺がいるから」

背中をさすりながら
少しでも安心できるよう声をかけ続けた。

顔は未だに真っ白。
涙に濡れた頬。
力の抜けきらない体と整わない呼吸。

一体なにがあったっていうんだ。
お前をこんなにするだけの何が。
ほんのさっきまで、
元気で可愛いだけの、いつもの睦だったのに。

「…睦。
お前はひとりじゃねぇからな…?」

なんとなく、そう呟いてやると
完全に息が整う前に、
睦はフッと
意識を失ってしまった。

「睦…?」

名を呼べばぴくりと小さく反応する。
…気を失った、というよりも
自ら遮断したように感じた。

「睦…睦!
逃げんなよ、俺がいるから。
俺と一緒に闘え!」

ふたりで想いを繋げてきた。
互いが互いのものになったと確信していた。
それなのにここまで来て
おいてきぼりなんてありえないと思った。

俺はいつもお前のそばにいる。
それは、お前が俺を頼るためだ。

「ひとりで逃げてんじゃねぇよ…!
俺に分けろ!睦!」

湧き上がる怒りにも似た感情。

だってあんなの、
誰の目から見ても異常だった。
常軌を逸していた。

「おい睦!
このままなんて許さねぇぞ!」

俺が叫ぶと
がくんと、高所から落ちたように体が跳ねた。




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