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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第20章 旱天慈雨





「みっちゃん、今日も元気ねぇ。
あたしらあんたの顔見ないと
1日を終われなくなっちゃったよ」

年配の客が女中に声をかける。
常連のようだ。

「あら、嬉しいなぁ。
私もお二人の顔を見ると元気がでます。
いつもありがとうございます!」

にこにこと話すその女中は
言葉遣いも丁寧、笑顔も絶えない。
客に好かれるのも頷ける。

ただ、それを…
まるでバケモノでも見るような目で
睦は見ていた。
ひと口かじった餅を咀嚼する事も忘れ
ぴくりとも動かねぇ……

「睦」

名を呼ぶも無反応。

「おい睦!」

少し強めに呼ぶと、
それに気がついたのは
睦本人ではなく
隣の客と女中の方だった。

話の腰を折ったと申し訳なく思った俺は
そちらに向かって軽く会釈をする。
…と、睦の様子がおかしい事に
その女中が気づき

「あの…お客さん…?」

回り込んで来ようと、こちらに足を向けた。
近づいて来る事を予測して
睦はバッと顔を逸らす。
見開いたままの目で俺を見つめた。

どうしたんだこいつは…?
どうにも様子がおかし過ぎる。

「お顔が真っ青ですよ?
具合でもお悪いの…?」

俺たちのテーブルの横に立ち
ひどく心配そうに女中は言った。
声をかけられているにも関わらず、
睦はぴくりとも動かないまま
俺の目を見つめている。

まるで、俺に何かを訴えているかのようにも見えた。


「おい、」

いよいよおかしいと思い
立ち上がりかけた所へ

「お客さん…?」

その女中が睦の肩に手を伸ばした。
それを察知した睦は
触れられるのを恐れたようにその手から逃げ
派手に椅子から転げ落ちた。

驚いたのは手を伸ばした女中と周りの客たち。
俺は慌てて睦のそばに駆け寄り
抱き起こそうと肩を抱いた。
その、ひどく硬直した体に驚いて
つい見下ろしてしまう。

さっきまで青かった顔は
それを通り越して真っ白。

「悪ィな、気分が優れねぇらしい。
ソレ包んでもらってもいいか」

「あ…はい、すぐに」

心配そうに睦の事を見つめていた女中に
食いかけの餅を持ち帰り用にするよう頼んだ。



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