第19章 思い出 ☆彡
「……」
なんと言うべきかを考えあぐねていると
「…納得いかねぇか?」
私の髪に鼻先をうずめながら問う。
黙り込んでしまったからだ…
私は慌ててかぶりを振った。
「違います…。あの、
こんな事しててもいいんですか?」
「んー?あぁ、…睦は、
俺のそばにいたいか?」
「…はい」
素直に答えられた私を、
宇髄さんは自分の事のように喜んでくれた。
⌘
そうだった…。
私のこと、
ちゃんと見てくれてたっけ。
……
「ねぇ天元…?」
睦は唇をゆっくりと離し、
そこを指でなぞりながら
とても切なげに視線を落とした。
うつ伏せたまま
上体を持ち上げた。
「ん…?」
「そばに、いてくれてありがとう…」
「なんだ急に…。泣きそうだし」
私を見つめたまま
愛しそうに抱きしめてくれる。
「可愛いなぁ相変わらず。
そんなこと言えるようになったのか…」
近づく彼に甘い予感。
目を閉じると、そっと口づけが降りてきて…
「ん…天元の、おかげ…」
「…やめとけ。離せなくなる」
切羽詰まったような、
色を湛えた彼の瞳がこちらに向けられた。
「…離さなきゃ、だめなの…?」
さっきから溢れてしまいそうだった涙が。
「泣いたら余計に離してやれねぇだろ?
…っとに、相変わらずしょうがねぇヤツだな」
言葉は悪いのに
ひどく優しい声が私の耳をくすぐった。
泣くのも笑うのもこの人のせいだ。
「本格的に、時間が怪しいってのに…」
全身でのしかかってきた天元は
私の首にほっぺたをぴったりとくっつけて
そのまま動かなくなった。
「こんな時に泣くなよ。そばにいるから」
「…っ、あ、のっ!くすぐったい…っ」
「……」
顎が動くと首筋をくすぐられるのだ。
逃げたいけれど、
大きな体をどかす力は私にはない。
「あれ?もしかして、笑ったか?」
「やぁっ!わざとくすぐらないでっ」
「お、笑うなぁ?こうすると」
私を笑わせるためなら
くすぐったりもするの?
声を上げて笑ってしまう私を
やっと離してくれた天元は、
私を見下ろして
「笑ってろよ、そうやって」
ほっぺたに口づけてくれた。