第19章 思い出 ☆彡
「悲しくて、涙が出るんじゃないよ…?」
「…そう願いたいね」
ちゅっと小さな口づけを繰り返して
私の心を攫っていく。
「そ、やって…優し、から…」
「優しくしても泣くのか…?」
「泣くの。…天元の前でしか、
泣かないって…決めたの」
「…睦」
「1人では、もう泣かない」
「…いい心がけだな。これからは
お前の涙も、俺だけのモノってことだな」
「ん…天元がいてくれたら、
悲しいことはもうないもん。
何にも、ないの…っ」
「そうか。わかったよ。
俺も、お前を1人では泣かせねぇから。
…睦は独りじゃ、ねぇからな?」
降り注ぐ口づけは
私を溶かしていく。
おかげで、止まらなかった涙も
少しずつおさまりそう…
「そばにいてくれてありがとう。
見捨てないでいてくれて、ありがと…」
「何言ってんだ。…睦こそ
よく俺に愛想尽かさなかったもんだ」
「だいすきだもん」
私の発した一言に、彼はハッと動きを止めた。
だめだと思う。
可愛い睦は、俺に追い討ちをかける。
その口が可愛い事を言うたびに
俺は喜びに震え、
その目が俺を見つめるたびに
止まる理由を削がれていくのだ。
だってこいつ、1人ではもう泣かねぇと言った。
俺はそれが、ひどく嬉しかった。
やっと…やっとだ睦。
長かったな。
1人で苦しんで、孤独を抱えたお前が
やっと俺に心ごともたれかかって来てくれた。
俺の喜びと言ったら、
言葉なんかではとてもじゃないが
表す事はできねぇ…
故に、だめなのだ。
「睦…、」
愛しい名を、滑らかな肌に囁き
更に掌でもその感触を味わう。
「…ん、…天、元…っ」
溢れる気持ちを止められない俺を
拒みもせずにただ肌を紅に染め上げて
静かに啼く睦。
こいつが拒んでくれねぇと、
とてもじゃねぇが、…。
「睦、…」
軽く目を閉じた睦と口づけを交わす。
片手で顎をきゅっとつかみ、
口を開けさせて濃厚な口づけ。
息が苦しいと言って、
口づけなんて
ろくすっぽ楽しめなかった睦が
「ん、…ふ、あん…っ」
上手に息継ぎをしながらも
可愛い声を上げるから
俺は余計に止まれなくなっていく。