第19章 思い出　☆彡

私が、幸せになれる場所…。
そんな場所があるのかな。

…『ある』んじゃないんだ。
作ってくれようとしてるんだ。
でも確かに、この人は
ずっとそう言い続けてくれていたような気がする。

「睦がよくて…、
楽しんで出来てんのなら俺も何も言わねぇよ？
でもお前はなんかを恐れてたろ。
それじゃ意味がねぇんだ」

「うん。怖い。ちゃんと出来ないと…」

「わかったわかった」

私の言葉尻を奪った宇髄さんは
今度はほっぺたを擦り寄せて来た。
その先に何を言うかがわかっているみたい。
そんな事よりも…
…くっ、つきすぎな気がする…。

「でもそれ、
俺の前では全く必要ねぇから。
しっかりやるのはお前のいい所だが、
やらなかったからと言ってお前を叱るヤツは
ここにはいねぇ。…だから、
やらなきゃいけねぇワケじゃねぇからな？」

「…はい」

まだ身を硬くしている私を
少し離れて眺め、

「…まだわかってなさそうだな。
お前明日も同じことするだろ」

怪しげに目を細めた。

「……頭ではわかってるつもりですけど、
心の方がついて来られるかどうか…」

「そうだな、急にはムリだよな。…心か」

完璧にこなさないと叱られるし叩かれる。
そんな、思い出したくもない事に
未だに怯える事になるとは…
何とも情け無い。
この人は、誰よりも私の事を考えてくれる
唯一の他人だというのに。
素直に甘えることもできない私を
この人は嫌にならないのかな。

「でも、…」

両手でこめかみの辺りから指を差し込んで
私の髪を梳きながら顔を寄せた。
間近で見つめられて
私はなかなかに緊張する。

「睦はそうやって
自分を守って来たんだもんな？
…えらかったなぁ。
ちゃんとうまくできてたワケだ」

優しく褒めてもらって、…
思いがけずに褒めてもらって、
私は涙が出そうになった。

「…なんで、そんなこと言うの…」

「んー？睦を愛してるから」

「あい…って…」

「あぁ、愛してるよ」

平気でそんな事を言って、
宇髄さんは身ぐるみ抱きしめてくれる。

「でも私、明日も…
同じことしちゃうかもしれないのに…」

「そしたらまた、同じこと言ってやるからな」