第19章 思い出 ☆彡
「何かあったの?」
「いや、大したことじゃねぇんだ。
ただお前の手を煩わせるのが忍びねぇ…」
「手?」
私は両手を胸元でグーパーして見せる。
それを見て天元はふっと笑い、
「昨日なんだが…着物の裾をな、
植木に引っ掛けちまったみたいで」
ぽりぽりと頭を掻いた。
「それならちゃんと繕ってありますよ」
「あぁ、繕って…?え?」
私はひとつ頷いて、
「今朝、破けてるのを見つけたので
直しておきました」
にっこり笑ってみせる。
すると天元は
「そう、なのか…?そりゃありがてぇ」
形のいい目を
少しだけ見開いて私を見つめた。
「よく気づいたな…」
「うん。偶然見つけたの。
部屋の衣紋掛けにあったから…」
「そうか。ありがとな。
手間かけさせたな、助かった」
お礼を言われ
「うん。私のお仕事だからね!」
くすぐったさに身をよじる。
「でも…遠慮しなくても大丈夫だよ?
なんでも言いつけてね?」
「……」
宇髄さんは何か言いたげな目を私に向けた。
……私、何かおかしなこと言った?
「それは、お前にとって幸せか?」
「え…?…う、ん。幸せだよ?
宇髄さんの役に立ってると思うと
ひどく幸せな気分になる」
気持ちを、素直に言葉に乗せたつもりだった。
なのに…何となく不信な目を向けられる。
「…そうか。ならいい」
ポンと手を頭に乗せられ
ニッと笑われた。
無理矢理納得して下さった感が否めない。
「さ、じゃ俺は風呂そうじでもしてくるかねぇ」
立ち上がりかけた宇髄さん…
「…それ、終わってます…」
「はぁ?」
「お風呂、洗いました」
「もう?」
「はい」
「…大変だったろ、広いし」
「いえ、楽しかったくらいです」
「そっか…」
もう一度腰を落ち着けた宇髄さんは
顎に手を当て思案顔。
…何をしても絵になる人だなぁ。
つい目が離せなくなる。
「そうか、なら…」
呟きながら庭に目を向け
「…布団は干してあるな」
ぼんやりと言った。
私も何となくそちらに目をやり
「…はい」
同じくぼんやりと答えた。
「お前あそこまで布団運ぶの大変だろ?」
「えぇ…?そう、ですね…そんなには…」