第19章 思い出 ☆彡
そうなれば煉獄も両手放しで可愛がるだろう。
……
俺その場面を許せるか…?
許せる以前に、
まずいい気はしねぇ気がするな。
「…会わなくてもいいんじゃねぇかな」
「何故だ。…そんな事より、
カマをかけたはずが本当だったとは驚きだ」
はっはっはっ、と…
近所迷惑にもなりかねない程の大声で笑い、
煉獄はひどくご機嫌さん。
カマをかけた、だとぉ…?
「…時に煉獄、お前も女がいるなぁ?」
「む…。俺の事こそ今は無関係だ」
珍しくもごもごと口籠る。
「へーぇ。お前の女こそ気になるな。
この清く正しい煉獄サンのご寵愛を受けるのは
どんな女なんだろうなぁ?
それこそ会わせてもらわねぇと」
「いや、それは遠慮してくれ!」
そっぽを向いていた煉獄は
くるっと勢いよくこちらを見上げた。
「…なんでよ」
「いや。いろいろあってな」
「いろいろ?」
「あぁ、アレは俺のだからだな、
君に会わせて気を持っていかれては困るというか、
いや、待て、余計な事を言ったか。
それでなくとも負い目があるというのに
余計な心労をかけては…」
「あー…わかったわかった。やめとく」
明朗快活な煉獄がおかしくなりやがった。
普段目にしない煉獄の姿に、
心配になってきた俺は
一旦、話をなかったことにした。
それにしても
俺と同じような事を考えていたとは驚きだ。
だが…俺を見て恐れる女はいても
惹かれる女は少ねぇと思うがなぁ…。
この身の丈だけで引かれる事はある。
……睦は、恐れなかったな。
あいつが見た目で判断する女じゃなくてよかった、
心から。
首をひねったり頷いたりしている俺を見て、
「君は男振りがいい上に気立もいいから
心に決めた女性がいると聞いて
枕を濡らす人も少なくないのではないか?」
なんて、大真面目に言いやがる。
まさかの台詞だ。
この男からそんなお褒めの言葉を頂戴するとは
夢にも思わなかった。
「…本気で言ってんの?」
「心外だ!俺は本当の事しか言わない!」
「そりゃ、…どうも」
…いや、
「その台詞、そっくりそのまま返すわ。
男気があって更に面倒見もいい。
しかも強ぇしなぁ。その優しさは
女を虜にするだろ?」
女を泣かすのは煉獄の方だと思う。