第19章 思い出 ☆彡
…………。
「いや、いいだろ俺のことは」
「ああ、いい。少し気になっただけだ」
早朝の町中。
起きているのは俺と煉獄と、
顔を覗かせ始めた朝日くらいだ。
夏の朝は涼やかで心地いい。
そうだ、
「散歩」
という事にしておこう。
だが、そういった事を後悔する事になる。
「俺も付き合おう!」
「はぁあ⁉︎何で⁉︎」
大袈裟に声を上げる俺を
不思議そうに見上げた煉獄は
「何故と問われると…」
叱られた子犬のように
しゅんと下を向いた。
えぇー…?
「いーよいーよ。行こうぜ散歩ー」
「そうか!」
ぱっと顔を上げ瞬時に笑顔を作る煉獄。
…騙されたかなと、
そんな思いがよぎるが…
こいつに限ってそんな事はあり得ないような気がした。
「煉獄は何、今日は非番かよ?」
「いや、今夜の指令は来ている!」
「そうなのね。余裕だな。さすがかよ。
…俺はさっき帰ったばっかなの」
そう。
宵のうちから家を出て
鬼やっつけて帰ってきて、
着替えて、今なんだよ。畜生。
「それはお疲れだろう!
…休まなくてもいいのか?さすがだな宇髄!」
「…いや、休みてぇわ」
休みに行くとこだったんだよ。
お前に邪魔されがちなんだって。
「そうかそうか。
休みたいが体を動かさずにはいられないと」
「……」
それでもいいけどね。
煉獄がそう思いてぇのなら。
「して、どのような鬼だった?」
相変わらず勤勉だ。
抜かりがないというかクソ真面目というか。
他人の経験も自分のものにしようという
その姿勢が、この男を強くするんだろうな…。
「んー…粗悪だったなぁ。
恨みつらみがひでぇ。おかげで強かった。
…もったいねぇよな」
何に対してかは知らねぇが
あんだけ強い恨みをもって力を増幅できるなら
その逆だって出来ただろうに。
「妙な力使いやがってな、」
道々、昨夜の話を聞かせる俺と
うんうんと聞き入る煉獄と……。
そんな事をしているとだ、
本来の目的を忘れてしまう。
あれ…?
俺何しに行くとこだった?
「睦だ!」
「何⁉︎睦⁉︎…それは何だ‼︎」
目的を思い出した俺は
突然その目的を叫んでしまった。
鬼の話を聞いていたはずの煉獄は
もうわけがわからねぇだろう。