第19章 思い出 ☆彡
「……」
なんとなく恥ずかしくなった私は
項垂れる勢いで俯いた。
「なんだ、どうした?」
急に下を向いた私を心配したのか
肩に手をかけ覗き込む。
「いえ…なんでもないデス」
「…俺に嘘つくな」
低く言われて、
両手で顔を包まれ、くっと上げられた。
間近で睨まれる…
「……っごめんなさい…」
瞬時に萎縮する私を見て、
「あー、いや!怒ってねぇ!」
慌てて表情を和らげた。
「怒ったんじゃねぇの、…参ったな」
「ん…ごめんなさい…
もう条件反射なんです。気にしないで」
「気にするだろ。お前を泣かすのは嫌なんだ」
「…泣かないもん」
「泣いてからじゃ遅ぇ…」
私の目尻が濡れていないか、
唇で確かめる宇髄さん。
くすぐったさに身を捩ると
嬉しそうにそれを追って来る。
甘い雰囲気に心臓が高鳴った。
こうなると、どうしていいかわからなくなるのだ。
嫌なわけじゃない。
どちらかと言うと嬉しい。
大好きな人がそばにいてくれて。
でも、その喜びよりも
恥ずかしいのが勝るのだ。
「…あの、ね、さっきの…」
私はなんとか、逃れる道を探していた。
それを理解した上で、
それでも私の話に耳を傾けてくれる。
「おいしかったから、食べてもい…?」
じとっとした目で私を見て、
「そういう可愛い事を言やぁ
俺が絆されると思ってやがんな?」
憎らしそうな目をした。
…そう、確かに。
この人が私に甘いことを知った私は
多少調子に乗るようになっていた。
……
「…だめ、ですよね」
それでも遠慮してしまうクセは直らない。
本心から言ったのに、
宇髄さんは大きなため息をついた。
「…お前なぁ…」
諦めに近い彼の声を聞き
私は顔を上げる。
すると
嬉しそうでいて、でも困ったような、
少し焦って、なのにこの優しい眼差しは、
私を呆けさせた。
だっていろんな感情が入り混じっているのに、
そのすべてが愛に満ちているのを
感じてしまったから。
「わざと言ってるだろー?」
愛しげに私を抱き寄せながら
負けを認めたような声。
悔し紛れなのか
力いっぱい抱きしめられた。
「わざと、っなわけありません!」