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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第19章 思い出 ☆彡






私はただうんと頷いてみせる。

「少しの間ひとりだ。だが、すぐだからな?」

「…だいじょ、ぶ…」

「いい子だ」

くしゃっと笑うと、音もなく姿を消した。
…いい子って…
痛みの合間に、私こそ笑ってしまう。
相変わらず私を甘やかす。

収まった痛み。
そっとお腹をさすってみる。
…もう、生まれるの?
早く顔が見たいけれど、
やっぱりちょっと怖いような…

「…っうぅ…」

和らいだかと思えば
また強くなる痛み。
強くいきみたくなるけれど、
そうしてもいいのかわからなくて
我慢する。
だって、もし生まれちゃったらどうする?
ひとりの時にそんな事になったら怖すぎる…

きっと、産婆さんを呼びに行ったはずなのだ。
ついでに雛鶴さんたちを連れて来るに違いない。

ひとりの時に何か間違いがあってはいけない。
そう思って、定期的にやってくる痛みに耐える事
ほんの数分…
…永遠にも感じたけれど。



そこからは、地獄。
お産の進まない事といったら。
陣痛は来る。
でもちっとも定まらない。
あなたは生まれたいの、
それともまだお腹の中に居たいの?
この子にそう問いたいくらいだ。

産婆さんに我慢しろと言われたまま、
丸一日が経った。
やってくる痛みに、ろくに眠る事もままならない。
いたずらに体力は奪われていくし、
和らいだ瞬間、眠りに落ちるのに
再びやって来る激痛に起こされる。
…それを延々と繰り返して…

部屋の外に出された天元も気が気じゃないはず。
お湯を換えに雛鶴さんが部屋を出入りする度に
わーわー喚いているのが聞こえた。
私たちを見兼ねた産婆さんが、
特例だと言って部屋に入れてくれたくらい。
ぷんすか怒りながらも、
私の衰弱っぷりと、天元の焦りを考慮して
おとなしくしているのを条件に。


強く、握られる手のぬくもりが、
私の髪を撫でる優しさが、
遠慮がちにかけられる声の温かさが
…私に力をくれたと思う。









「天元の声に呼ばれて生まれたよね、弥生は」

「睦に会いたくて生まれたんだよ弥生は」

私たちは目を合わせて笑い合った。

「弥生を抱いた瞬間に
あのツラい時間が吹き飛んだの」



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