第19章 思い出 ☆彡
「…そ、なれたら…て、おもっただけ…」
「睦お前…」
「も、いいの。…私なんかが、
そんなこと思う、なんて…
お門違いにもほどがあった…」
ズル、と俺の膝から地面に下りた。
そんな事を思ってくれていたのに、
俺の態度はどうだった?
離すまいと伸ばした手を
ぐいっと押しやられた。
「そんな事ねぇ。
…可愛い夢、見てくれてたんだな。
ごめん…ありがとな…」
「…捨てます」
「…おい、」
冷たい一言と共に立ち上がる睦。
ずきっと痛む胸と、焦る心。
捨てる…。
夢を?…俺を?
ここまで来ねぇとわからねぇ自分が恨めしい。
肩を掴んだ手を払い、
睦は俺を置いて歩き出した。
やべぇ。
これは、やべぇヤツ。
無理にでも繋ぎ止めなければ、終わる…。
終わらせたくねぇんだ。
「睦…!頼む、謝るから!
こんな事、もう2度とねぇ!」
睦の正面に回り込み
目を見て告げるが…
その目は何も映していなかった。
「睦…、なぁ睦…?
俺を見てくれよ頼む」
冷えた頬を手で包み、額を合わせた。
「俺がお前をわかっていなきゃならなかったのに
それをしてやれなかった…
睦…。睦」
せっかく手に入れた愛しい存在。
俺だけのものになったと思って驕っていたのだ。
俺を信じて話してくれたのに、
ここまで落ち込ませた。
「でも、…
…あんな所から飛び降りるのは違うだろ?」
俺の言葉に、睦はぴたりと立ち止まる。
「……あそこから落ちたら、
ちゃんと、いたいといいなぁって…」
「痛ぇよ。俺も、痛ぇ」
「…宇髄さんは痛くない」
受け答えがはっきりして来た。
少し、ほっとする。
でも俺の目は見ないまま。
「お前が痛きゃ俺も痛ぇんだよ」
「…うそつき」
俺のことを睨みつけた。
…見た。
俺を。
憎まれようが恨まれようがいい。
こいつが、俺の存在を認識するのなら。
そうしてまた、必ず俺のものにする。
「お前が痛ぇのは嫌だ」
「自分が…私に痛い思いをさせたくせに…!」
あぁ、その通り。