第19章 思い出 ☆彡
ぷっと吹き出す宇髄さん。
…この人が笑うのは、可笑しいんじゃなくて
愛しい時なのかもしれない…
うちに着いた私たちを出迎えたのは
やっぱり泣いている須磨さんだった。
「睦さあん!」
「須磨さん…今度はどうされたんですか?」
呆気に取られている私とは逆に
「お前もういい加減にしろよ」
宇髄さんは怒り気味。
「1日にどんだけ睦に
泣きつくんだよ!」
ハタから見たらきつい言い方だけど、
この人たちの関係を知っている私にしてみれば
何とも微笑ましい光景だ。
こんな話し方をすれば
普通ならすくみ上がってしまうに違いないが
確かな信頼関係があるからこそ
成り立つんだなぁと感心してしまう。
「天元様には迷惑かけてません!」
「睦の迷惑は俺の迷惑だ」
「宇髄さん!私迷惑だなんて思ってませんから」
私が口を挟むと
「そうなのか?ならいい」
すんなりと引いた宇髄さんを見て
「天元様、前から思ってましたけど
睦さん本意が過ぎませんかー?」
涙を引っ込めた須磨さんが言う。
「そんなん当たり前ぇだろ」
恥ずかしげもなく堂々と言う宇髄さんは
とりあえず土間に鉢を下ろした。
「須磨さん!で、何があったんですか?」
「あ、あの…さっきの髪留め、
ネックレスにしてもらうことできませんか?」
「ネックレス…?」
「ずっと身につけていたいんです!
髪留めだとどうしても外さなくちゃ
いけないから…」
「そんなに気に入って下さってるんですか…?」
「はい…!」
「でもよ、さっき睦に直させたばっかだろ」
宇髄さんのツッコミに
須磨さんはウッと言葉を詰まらせた。
「…そ、っそうなんですけどー…」
「直す前に言えよ」
「ごめんなさい…」
身を縮めていく須磨さん。
何だか可哀想になって来て
「大丈夫ですよ須磨さん。
謝らないでください」
私がそう言った途端、
「そうだな」
うんうんと頷く宇髄さん……
私も須磨さんも、彼をじとっと見つめてしまう。
「宇髄さん…どうしたんですか」
「いや、お前がいいならいいんだ俺は」
「…ありがとうございます…」
ん?ありがとうと言うところか…?
「天元様って…
睦さんにだけ対応違いますよね」