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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第19章 思い出 ☆彡






「……」

無言で私を見下ろし、
しばらく思案顔だったが
急ににやりと笑った。

「…見惚れてんじゃねぇよ」

「…っ!」

「好きな種はあんのか?」

あんな事を言っておきながら
するりと話題を変える。
腑に落ちないけれど…

「『紅冬至』…と、『河津桜』…」

私は思いついた種を答えた。

「へぇ、お嬢さん知識があるんだねぇ」

宇髄さんの隣にいた店の主人が
感心したように言う。

「あ、の…身内が好きだったもので」

おじちゃんの好きな花だ。
濃い色の早咲きの桜と、
綺麗な薄紅の…
おじちゃん早咲きが好きなのかな。
実はせっかちな性格なのかも。

「そっかそうだなぁ…寒桜もうあるしな…」

宇髄さんの独り言…
……もしや買うつもり?

「河津は2月頃に咲きますよ。
寒桜は師走の頃だから
時季は少しずれています」

「しかしな…」

真面目な声。
張りがあって凛としたこの声が好きだ。
……でもあんまり、私に向けられる事はない、
ような、気がするな…。…なぜ?

宇髄さんは店主と小難しい話を始めた。
…ややこしくしちゃったかな。

少し後悔しながら、
私は足元に目をやった。
そこには大きめの盆栽が並んでいて…

「……」

可愛い藤の花が咲いていた。
藤ってまるで…。

しばらく見入っていると
話も一段落したのか

「睦?それ気に入ったか?」

宇髄さんの声が降って来た。

「うん……。藤の花って…」

「んー?」

「葡萄みたいで可愛いですよね…」

「ぶど…」




「あんなに笑う事ないのに!」

私はぷんすか怒りながらずんずん歩く。
それをゆったりと追いながら

「可愛かっただけなんだって。
なぁ待てって」

含み笑いをしている!
まだ笑ってる!

さっきのお店で
藤の花が葡萄のようだと言った私に、
天にも届くほどの大声で笑い出した宇髄さん。
店主も目を丸くして、
それでも私に気を遣い笑いを堪えていた。

そんなにおかしなこと言った?
だってあの房のような形と色。
誰でもそう思うでしょう?
あんなに笑うような事じゃないと思う。

「おい睦…っと、」

私の腕を掴もうと手を伸ばした瞬間、
もう一方の腕に抱えていた鉢を
落としそうになる宇髄さん。



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