第19章 思い出 ☆彡
後ろを見遣ると、
敵対心丸出しの目をした宇髄さんが見えた。
須磨さんを見据えたまま動かない…。
「宇髄さん…っ!」
「あぁ、悪ィ。なんだ睦?」
「どうしたんですか?怖い顔してます…」
私がちょっと心配になったのを察したのか
優しく目尻を下げて
「何もねぇよ」
いつもの笑顔を作ってくれた。
……?
なにかおかしいぞ?
私はその後、すぐに髪留めの修理を始めた。
取り敢えずそちらに集中する事に決めて…。
それでも、
飾りと留め具を剥がすのに時間がかかり
完成したのは1時間も後だった。
ちゃんとノリが固まったのを確認し、
私はそれを須磨さんに渡すべく部屋を出た。
すると反対側、縁側の方で
誰かの話し声が小さく聞こえて来た。
私は引き返して、
縁側へと通じる障子をそっと開けてみる。
すると縁側の沓脱ぎ石あたりに立つ
宇髄さんと雛鶴さんが見えた。
2人は何やら深刻な顔をして話し込んでいる。
私の耳では、何を離しているかまでは
わからなかったけれど、
取り敢えずすごく真面目な話のよう…。
座ったらいいのにな、なんて
どうでもいい事を考えながら
私は2人の様子に見入っていた。
……
宇髄さんのあんな顔、あんまり見ないな…
なんて言うか…よそ行きの表情というか、
オシゴト用のカオというか…。
…整っているばっかりに
少し怖いくらいだ。
でも普段見られない宇髄さんに見惚れ、
穴を開ける勢いで見つめていたので、
まぁ間違いなく気づかれる…。
「睦、終わったか?」
途端に和らぐ彼の表情。
それがまた別人のようで…
その落差に私の胸がきゅんと締め付けられた。
大きな爆弾を落とされたくらいの衝撃だ。
それはだめよ宇髄さん。
つい今しがた、引き締まった顔をしていたくせに
私を見た途端にそんな甘い表情になるなんて…。
わかってて?
わかっててやってるのかな。
私を翻弄するために?
…あり得る。
この人ならやりかねない…。
「は、はい…!
私、須磨さんにお返しして来ますっ」
慌てて顔を背けた私を不審に思っただろう。
宇髄さんは
「…あぁ、」
ふわふわと返事をした。
離れへ行き、
無事、須磨さんに髪留めを返した。
「うわぁー!嬉しいですー!
ありがとうございます!壊しちゃって
ごめんなさいでしたぁ」