第19章 思い出 ☆彡
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「睦さぁん!」
廊下の奥からかけて来たのは
いつも元気で可愛い須磨さん。
慌てた様子で、そして困ったみたいに
私の元に座り込んだ。
私はといえば
暖かい陽光差し込む縁側で
うとうとと、うたた寝。
ぱちりと目を開くと
眩しい現実の世界。
夢現の間を彷徨っていた私の目には
痛いほど。
「睦さんったらぁ」
袖を揺すられた私はハッと頭をもたげ、
数回、目をしばたたかせた。
「あー、せっかく寝かけてたってのに」
私の斜め上辺りからそんな声が降ってくる。
隣に座っていた宇髄さんに
いつのまにかもたれかかって寝ていたようだ。
「ぁ、ごめんなさい」
体を起こそうとした私を片腕で引き戻し
「何がごめんなんだ?
いいから休んでろ」
目を細めて笑った。
…起き抜けにこの笑顔はむしろ毒だ。
心臓に悪い。
まるで可愛い可愛いと言っているかのように
私の頭に唇を押し付ける…
須磨さんの手前、
その程度にとどめてくれているのだろうけど…。
「寝てる相手起こしてまで何の用なんだ」
結局、私を両腕で抱き込み
一体化したような私たちは
須磨さんに向き直った。
……。
「…ちょっと、離してもらえますか?」
この状況がおかしいと思った私は
背中に張り付いている宇髄さんを見上げる。
「やだね。で、須磨、用事は」
が、単的に拒否され、
何故か起こされた私よりも
不機嫌そうに宇髄さんが言った。
いや、これは話を聞く姿勢ではありません…
でも須磨さんはそんな事お構いなしで、
「睦さん、
これまだ直りますか?」
泣きそうになりながら、
両手に大事そうに乗せた物を差し出してくる。
それを目にした私は、
言葉を失った。
「…もう、無理でしょうか…?」
私が彼女の手の中の物を凝視したまま
黙ってしまったのを見て
須磨さんはがっくりと肩を落とした。
でも私が黙ったのはそんな理由ではない。
「須磨さん…これ、
どうして須磨さんが持ってるんですか…?」
私の言葉を聞き、
宇髄さんも須磨さんの手の中を覗き込んだ。
「あ、睦んとこで買ったやつだな」
「え…」
私はそんな声につられて、
宇髄さんを振り返り見上げる。