第19章 思い出 ☆彡
睦は言葉を詰まらせた。
「星は、お前をこんな所に連れて来たのか?」
「…うん。宇髄さんの所まで、
私を運んでくれたんです」
睦の目がみるみる潤んでいく。
「ばかやろう。
頼むから、危ねぇマネすんじゃねぇよ。
お前は、安全なとこでちゃんと待ってろ」
両手で頬を包み、正面に据えた。
睦はその手にそれぞれ手を添えて、
一粒、涙をこぼす。
「会いに来ることが、危ないことなんですか?」
「あぁ…あぁ、危険だらけだ。
お前は知らなくていい。
俺はお前を幸せの中に置いときたいんだ」
「…宇髄さん、私を…ひとりぼっちにしないで…」
つぎつぎとこぼれ落ちる涙が
俺の手を濡らした。
「一緒に、荷物を持つ事はできないの…?
私は蚊帳の外なんですか?」
「そうじゃねぇ。こうやって、
睦が俺の腕の中にいてくれることが
俺にとっての幸せだ。
お前を笑顔にしたい。笑っていてほしい。
笑わせてやりたい。それが俺の生きがいになる。
これが終われば、…間違いなく俺は
お前だけのモノになる。だからそれまで…」
黙って聞いていた睦は
ずるっと鼻を啜る。
「それまで…待ってる。
ちゃんと待ってるから、
宇髄さん帰ってきてくれるんですよね…?
私を置き去りになんて、しませんよね?」
「絶対ぇに帰る。誓う。
お前の元に、必ず帰る。
睦、俺と生きる覚悟決めとけよ?」
きれいな涙を流す睦に、
誓いの口づけを。
生きる。
俺は愛する睦と生きる。
こんなふうに泣かせるのはもう終わりだ。
そばに、いる。
⌘
あの時の想いは
何一つ変わってはいない。
この愛は、重くなって行く一方だ。
それなのに、
何故だろう。
日に日に、
伝わらなくなっていくような気がするのは。
愛していると言葉にした所で、
ちゃんと伝わっているのか
わからなくなってくる。
俺の腕枕で、
うとうととし始めている睦はひどく無垢で
俺の抱えた悩みなど
ちっぽけなものに思えてくるから不思議だ。
俺は大丈夫なのかと、勘違いしそうになる。
「睦…」
小さく名を呼び、様子を窺ってみた。