第19章 思い出 ☆彡
シゴトだ!任務だ!
俺の使命だ。…
自分を、叱咤する。
あぁ、そうよ。
でもな、俺は…。
ちょっと。
ほんの少しだけでいいから、
1人になりたかった俺は、
華やかな喧騒からずっと離れた川辺に降りた。
灯りも届かない、静かな場所。
川の流れ、優しい音が耳に届く。
目を閉じると
睦の家の近くを流れる
あの大きな川を思わせた。
あぁ、あいつに…。
睦に会いたい。
小さな身体を抱きしめて、
いい香りのする首筋に顔をうずめたい…。
見上げた先には、輝く星たち。
あいつも1人、この空を見上げているのだろうか。
——だめだ。
こんな事を考えている場合じゃない。
あいつとの未来を守るため、
俺は進まなくてはならないというのに、
何を余計な事ばかり考えているのだ。
あそこに、戻らなくては…
そう、自分の心を奮い立たせたその時…。
「おにーいさん、いい男だねぇ。
今夜、付き合ってくれないかい?」
草を踏む音と共に耳に届いた言葉。
こんなに離れているというのに、
まさかの台詞。
聞き飽きたほど聞かされた誘い文句。
ただ1つ、違うのは…
「私じゃ、務まらないかな…」
その女が、俺の睦だという事だ。
攫うように抱きしめた。
力いっぱい、この腕に。
幻ではないだろうか。
例えばこれが幻覚で、
消えてしまったりはしないだろうか。
それが何より怖い。
見つけたはずの睦が
実はいなかったなんて
悪夢以外の何者でもない…
「…睦。俺を、誘ってくれんのか」
付き合ってくれないかい?
そう言ってきた睦。
花街の女の言葉を真似て。
「はい…。宇髄さん…っ、すごい、力…
折れちゃいそうですよ…」
「悪い…。でも、もう少しこのまま…」
唐突に訪れた幸せに浸っていたくて…
離したくなくて、
俺は存在を確かめるために
強く強く抱きしめた。
珍しく弱みを見せる俺の背中に、
そうっと腕を回し撫でてくれる。
そうされて、
やっと俺も平常心を取り戻していった。
「睦、何で、こんなとこに居る?
夜に外出んなって何度言やぁわかるんだ」
「…ごめんなさい…。星に誘われて…」
ヘタな言い訳。
「こんなとこまでか。
ここは…お前の家からは随分あるぞ」
「……」