第19章 思い出 ☆彡
自分の言動に疑問を抱き
訊く相手が間違っているとわかっていながら
ついつい彼を見上げてしまった。
「さぁなぁ…。睦次第だよな」
えー…
「礼を言う言わないじゃなく、
俺は間違ってねぇと思ってるぞ。
何事も睦最優先だ。
こんな冷え切った体、ほっとけねぇし。
担いで走んのが1番早ぇが、お前ヤだろ?」
担いで走る…?
確かに速そう。
一瞬で解決しそう…
そんな事を考えてしまった私を見て
さすがは宇髄さん、鋭く何かを察知した様子…。
「…え?いいの?」
意外そうに目を見開いて
宇髄さんは歩を緩めた。
「いえ!良くはないです!」
私を担いで走らせるなんて
そんな事をさせるわけにはいかない。
「悪くもない、と?」
それはそうだ。
この寒さから少しでも早く解放されるなら。
「ほう…満更でもなさそうだな…?」
「ちっ違います!そんな事させられません!」
「お前がいいのがいいんだ。
こんだけ冷えてりゃそう思うのも当然だ。
ほら、来い」
再び私を抱え上げようとする宇髄さんに、
「いえ!違うんですったら!
あのね、こうやって…
一緒に歩けるのが、幸せなんです。
…くっついてる時間が長いのが、いい…」
必死で訴える。
「……うまく逃げたな睦」
憎らしげに、でも嬉しそうに笑う宇髄さん。
ウソを言ったつもりはない。
でも、この人の言う通り、
逃げた事も確かだ。
たったあれだけの事を口にするのに、
私はものすごく勇気がいった。
「可愛い睦に免じて
今回は譲ってやる」
相変わらず優しい。
…、
「…っくしゅ!」
「「…」」
「前言撤回予定変更」
私のくしゃみを聞いた宇髄さんが
呪文みたいな言葉を唱えた…
その瞬間、否応無く広い胸に抱え上げられた。
「…!宇髄さん…っ」
「お前の可愛い願いも叶えてやりてぇけどな、
風邪ひかせるワケにゃいかねぇのよ。
恨むなら俺じゃなく
こんな日にそんな薄着をしてきた自分を恨めよ?」
言い終わらないうちに駆け出した宇髄さんに
私はしがみつくしかなかった。
そうして、予定よりも随分と早くうちに着き……
玄関先。
まだ部屋にも…いや、
下駄すらぬがないうちに…
「…や、う…ず、さん…っ」
何故か激しい口づけを受ける私。