第19章 思い出 ☆彡
慌てて自分の口を覆った彼…
「…見失う…?」
「違う違う」
「…あと、つけてました?」
「違うって。
睦を見つけて追ってきただけだ。
物騒だろ?こんな場所…。
しかも日が暮れかけてんだ。
こんな時間に外うろつくんじゃねぇよ」
宇髄さんは私が夕暮れ以降、
外に出る事を極端に嫌う。
「ごめんなさい」
何となく素直に謝った。
すると気がおさまったのか
ふっと優しい瞳に戻って
私の目の前に立った。
「…どうしたんだお前。
何でこんな寒そうなの」
周りに誰もいないのをいいことに
私を身ぐるみ抱きしめる。
冷え切ったほっぺたが
あったかい宇髄さんの胸に押し当てられ、
くるんでくれる長い腕は
私の冷たい体をさすって暖めてくれた。
うわぁ…
「宇髄さんあったかぁ…!」
ここがどこなのかも忘れて
私は宇髄さんに抱きついた。
珍しい事をする私に驚いたのか
「…よっぽど寒かったのか?」
目を見張る。
「まぁ…寒いだろうなぁ、そのカッコじゃ」
「こんなに寒いとは思わなかったんです。
だって昨日はあったかかったから…。
遅くなるつもりもなかったのでつい…」
ふわふわと言い訳じみた事を言った私を
ひょいと抱き上げて
自分の羽織の中に入れてくれた。
「えぇっ⁉︎何するんですか!」
「何って…あったけぇだろ?」
「…うん、あったかい。けど
こんな所でこれは…困ります…」
あんまり当然のように言われて、
私は一瞬、飲まれてしまいそうになったけれど
ちゃんと思った事を伝える事ができた。
「困る…?それは俺の方だ」
「え?何で宇髄さんが困るんですか?
ちょっと…お、下ろして下さい。
幼な子じゃないんですから…っ」
下ろして欲しいが、
暴れたら落ちてしまいそうで、
こんな高い所からそうなったらと思うと
怖くてどうにもできない。
「寒そうなお前を見てるだけで
俺も寒くなるからだ」
「…そう、ですか?」
「そうなんだよ。
俺の為にも、お前は是非あったまってくれ」
羽織を深く合わせ、
私を隠すようにしながら宇髄さんは歩き出した。
「えぇっこのままですか⁉︎」
まさかコレで帰るつもりなの?
「当たり前ぇだろ。
でなきゃ結局寒ィじゃねぇか」
「でも…っ」
慌てた私は、どうすべきか思考を巡らす…
が、
違う答えにたどり着いた。