第19章 思い出 ☆彡
まったく核心をつかない私の返答に
呆れるでもなく
するりと受け流してくれる宇髄さん。
「待つ?」
「あぁ。お前のすべき事が終わるまで待つ」
「…夕方になっちゃいますよ?」
「いいぞ、夜になっても」
そんなこと言ったって…
「…宇髄さん、何しにきたんですか?」
「んー?…んー…お前に会いにきた」
「……」
不覚にもどきりとしてしまった。
「くく…わかりやすいヤツ」
愛しげに両目を細めて笑う…
笑われたのに、
「…ありがとございます」
全然イヤな気がしなかった。
「でも、宇髄さんもお休みなのでは…?」
「あぁ、休みだ。
何かあれば呼び出しがかかるがな」
「いいんですか?
貴重なお休みをフイにしちゃって」
「フイに…?いやいや、そんな事にはならねぇよ」
呆れにも似たような目で見られる。
「だって睦のこと見てられんだろ?
贅沢なくらいだ」
今度は私が呆れる番だった。
何を言うのかこの人は。
「あー、いいから。
お前はとっととすること済ませちまいな」
私の視線を受けて、
宇髄さんは手をひらひらさせながら
茶の間の座布団にどかっと座った。
……本当にいいのだろうか。
そんな事を思いながら、
私は残りの掃除をし、
干した布団と洗濯物を取り込んだ。
ちょろちょろと動き回る私を
時折、感心したように見遣り、
何か口を出すでもなく
ただ黙ってお茶を啜っていた宇髄さんの元に
やっとこさ座った時には
時計の針は4時を回っていた。
「お前はよく働くなぁ…。
一体いつ休んでんだ?」
ぽんぽんと頭を撫でながら
「お疲れさん」
労ってくれる。
「ありがとございます。
…自分の事をしただけなのに
そんなふうに言ってもらえるの、
ちょっとくすぐったいです…」
そう、当たり前の事をしただけのこと。
それを『お疲れさん』だなんて…。
でも嬉しいものだなぁ。
「あ、ほんとに遅くなっちゃいましたよね。
ごめんなさい…えぇと…」
あれ?
この人、何しに来てくれたんだっけ…
「いや、俺が勝手に来たんだ。
謝る事はねぇ。ただ…」
隣に座る私にずいっと近づき、
思い切り顔を寄せると
「この後の時間は、俺がもらってもいいか?」
背筋が震え上がるくらい、
色気たっぷりに囁かれた。
突然の事に呆然としてしまう私。