第19章 思い出 ☆彡
「反論も出来ねぇか」
「違います…!
宇髄さんを疑ってるんじゃなくて、
他の人の方が、きっと宇髄さんを
幸せにしてくれるはずだと思って…」
はぁ?
「何を言ってるかわかってんのか?
俺は睦に惚れてんだぞ。
他の女なんていらねぇんだよ!」
声を荒げると、びくりと肩をすくめた。
あぁ、また…。
怒鳴ったらだめだ。
俺は何とか気を収める。
「怖ぇのはお前だけじゃねぇんだよ。
俺だって、お前に嫌われたらって思うと足が竦む。
でもそんなモン、お前手に入れるためなら
なんて事ねぇ。
立ち止まって何もしねぇくらいなら
派手に砕けた方がマシだ」
落ち着いてひとつひとつ紡いだ言葉たちを
睦は黙って聞いていた。
初めて、まともに聞き届けられたような気がした。
俺が、勢いではなく、ごまかしでもなく
しっかり心を込めて伝えれば
睦はちゃんと聴く。
受け入れてくれる。
それがしっかりと、伝わっているのがわかる。
多分こいつは、
真実を見分けることに長けているんだ。
人の心に敏感だ。
本心を隠せば、虚偽があるとすぐに見破るだろう。
雰囲気に飲まれる事なく、
本当のことを見抜くはず。
なら俺は胸の内を、余す事なく曝け出すだけだ。
例えどんなに、無様でも。
⌘
「ウソホントに敏感だよな…。
つうか、俺はお前に対する気持ちに
ウソはなかったんだぞ?
むしろお前の方だ、ごまかしやがって」
「えぇ⁉︎ごまかしたんじゃないよ。
気づきたくなかったんだもん。
止められなくなるのがわかってたから…」
今更、過去を蒸し返され
睦はいい迷惑だろう。
でもどうしても解せないのだ。
「本気の相手に対して、
お前はのらりくらりと躱してくれたよなぁ」
「…ごめんなさい。もう許してよ」
甘えるように縋って、
「ほら、今はこんなにだいすきだよ。
昔の事なんかもういいでしょ?」
いつもの上目遣い。
「お前それ、絶対ぇわかっててやってんだろ」
「…わかってない」
恥ずかしそうに俺の胸に顔をうずめた。
いやいや、ばっちりわかってんじゃん。
「純な睦ちゃんが、
あざとくなったモンよ」
「ひどい!そんな言い方…
許してほしかっただけだもん!
わかってるなら…
すんなり流してくれてもいいのに!」