第19章 思い出 ☆彡
それはなぁに?と、
目が語っている。
月を映して潤んで見えた。
その目が、俺を突き動かす。
「睦」
「なに?」
名を呼ばれたと思ったのか
睦が返事をした。
「違うよ。俺のほしいもの。お前だよ」
そう言った途端、
ボッと音が鳴る程の勢いで頬を燃やす。
…この世で1番可愛いモノ見つけたかも。
「ななな何を言ってるんですか?」
再び顔を背け
あまつさえ両手で顔を覆ってしまった。
どうしたらいいかわからないといった様子。
だが、わかっていた事だろう。
俺の睦への気持ちは
こいつ自身も知っているのだから。
「何って…だから俺のほしいものを…」
「やっやめて下さい!そんなこと…
言葉にしないで下さい…」
「…態度で示したっていいんだが、
それじゃお前、もっと困っちまうだろ?」
「態度で…?」
理解しきれていない睦に、
「どういうことなのか教えてやろうか」
ゆっくりと顔を寄せた。
鼻先が触れそうになった所で
互いの唇の間に睦が掌を差し込んだ。
「……からかわないで下さい」
怖いくらいに落ち着いた声。
さっきまで染まっていた頬は
むしろ青ざめて見えるほど。
ほら、態度じゃ示せねぇだろ?
だから、言葉で伝えるしかねぇんだよ。
それなのに言葉にするななんて無茶を言う。
「からかってねぇ。本気で惚れてんだよ」
「勘違いですって。よく考えて下さい。
私が他の女性たちと違って
自分のものにならないから
躍起になってるだけでしょう?」
「…お前…ひどいこと言うんだな…」
あからさまに肩を落とした俺を
驚いたように見つめた。
「え…?」
「睦は、自分が恋しねぇからって
俺の気持ちを踏みにじるのか?
お前が恋しなくたって、俺はするんだよ。
好きだから、こっちを向いてもらいたい。
お前が俺を好きになるためなら何だってする」
「え…あ、あの…」
俺の勢いにのまれ、狼狽える睦。
でも俺は引かない。
これは、押すとこだ。
この気持ちを疑われたんじゃ
俺だって黙ってはいられねぇ。
「お前は怖ぇんだよな?
俺のこの気持ちに応えんのが怖ぇんだ。
だからてめぇの気持ちにも気付かねぇフリをする。
そうして何だ?この俺を試してんのか」
「……」