第19章 思い出 ☆彡
畳に手をつき項垂れて、
弥生はただ打ちひしがれる。
可哀想なほど、反省していた。
自分のした事を悔いていた。
…もう、何も言わなくてもわかっている。
だから怒るのではなく、
叱るのでもなく…。
「なぁ弥生よ。勢いに任せた言葉なんてな
何も生み出しゃしねぇんだ。
だからこれからは、…まぁ、難しいだろうが
ひと呼吸おいてから話せ。
それだけで随分変わる。
誰かが言葉の刃を向ければ、
言われた方も、言った方ですら傷つくんだ」
単なるアドバイスを。
弥生は涙を流しながら、強く頷いた。
「…睦月の所に行ってくる。
お母さん怖いけど…」
くくく。怖ぇかよ。
「大丈夫だよ。ちゃあんとわかってくれるさ」
頭を撫でると意を決したように
廊下を強い足取りで進んでいく。
その背中はなんとも勇ましかった。
「睦ちゃーん」
早めの夕食を済ませ、
睦月と弥生のお風呂も済ませ、
湯冷めしないように早めに寝かせた。
まだ薄明るいとはいえ
落陽と共に下がる気温は
体を芯から冷やしていくようだ。
急な来訪者は、なぜか縁側の
障子側から顔を出した。
ひゅうと入り込む冷たい空気。
『ちゃん』付けで呼ばれる時は
あまりいい時じゃないような気がする。
何かしらやましい事があったり、
もしくは私を気遣う時…。
「なぁに?」
肩をすくめた私に、
「悪ィ、寒かったか」
部屋に入って障子をぴたりと閉めてくれた。
そのまま私の前まで来て座り込む。
真剣な目をして、
「大丈夫か?」
私を心配しながら
触れそうなほど顔を寄せてくる。
大丈夫、というのは
昼間のきょうだい喧嘩の事を言っているのだろう。
大丈夫かと聞かれれば、大丈夫ではない。
でも、
「ん…弥生を信じてる…」
そうするしかない。
私から言う事は何もない。
あの子は泣きながら睦月に謝って、
本心でない事を勢いに任せて言う事は
もう2度としないと誓った。
睦月は弥生を許したし、
弥生は充分すぎるほどわかっていた。
「あの時、弥生と話してくれてありがとう…」
「…あん時のお前じゃ、
まともな話はできなかったろ…?」
ひどく優しい声。
「やっぱり、…わかってた?」
「いや、…きっとそうかなーと」
「…うん。言われた事ね、あるよ」
「……睦…」