第19章 思い出 ☆彡
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「睦、お前ずっと何してんの」
朝メシの後からずっと部屋に篭りきり。
弥生を昼寝させてから、
睦の部屋を覗くと
何やら根を詰めている様子。
ぱっと顔を上げた睦は
目をぱちぱちと瞬かせて
「ごめんなさい…あッ!もうこんな時間!」
慌てて腰を浮かした。
俺はそれをやんわりと制して
「やる事やっといた。
洗濯物は取り込んだし弥生は寝かせた。
晩メシの準備は…任せてもいいか?
お前のメシが食いたいからな」
睦の後ろに座り込んだ。
両足で睦を挟むようにして
背中にぴたりとくっついた。
「ありがとう…。
申し訳ないのに、すごく嬉しい…。
天元かっこいい」
おべっかでなく、
本心から賞賛される。
「そんなんどうってことねぇ」
内心大喜びしてるのをひた隠し、
「で、何やってるって?」
何でもないフリをした。
ふふ、と笑った睦は
「天元がくれた蜻蛉玉があるでしょう?
あれを弥生に見せたら欲しがってね。
でも私の大切なものだから
あげるわけには行かなくて…。
似たような物なら私にも作れるかなぁって…」
自らの手で作り上げた小さなガラス玉を
日に透かして見せた。
俺が贈った物とは確かに違うけれど、
それはそれでとても良い出来で
なんとも言えない美しさ。
濃いめの青色、散りばめられた虹色の光沢。
「すげぇな、それ睦が作ったのか…?」
「うん。でも随分と時間がかかっちゃった。
家事を全部押し付けてごめんなさい」
「いやいや、そんなんは大丈夫だって。
大したモンだな…」
時間がないからと
小物作りをやめてしまった睦。
こんなに美しいものが作り出せるというのに
なんと勿体ないことか。
「これなら弥生、納得してくれるかなぁ?」
「納得どころか大喜びじゃねぇか?」
「そうだといいな…」
満更でもなさそうな物言い。
自分でも満足のいく出来だったに違いない。
「この指は魔法の指だな。
なぁ、俺にも魔法かけて…」
ガラス玉を傷つけないよう、
静かに卓の上に置き
睦の指を絡め取る。
「えぇ…?魔法?」
困惑する睦は
振り返り俺を見上げて小首を傾げた。
「俺、今日はがんばったろ…?
その魔法で、俺を癒せ」