第19章 思い出 ☆彡
「聞いてる…」
そぅっと、
割れ物でも扱うように抱き寄せてくれて
「そりゃ、…驚いたな」
ちょっとずつ現実に戻ってくる。
「うん。私も、」
「でもまた、はっきりしねぇんだろ?」
「うん。でもきっとそうだよ」
「わかんのか」
「わかるよ」
「そっか」
じゃもうそうなんだろうな、なんて
落ち着き払ってはいるが…
次の瞬間、
「あ″ぁ‼︎ぎゅうしてぇ!」
急に大声を出した。
落ち着き切れなかったようだ。
「力入れたらダメだよな?あぁ、
えぇと…弥生に、言ってもいいのか?
いや早いか」
弥生の時よりも慌ててる…?
「そうか。大丈夫か?いや何がだ。
…睦、」
つい笑ってしまった私を見て
やっと気持ちの整理がついたのか
「…睦ありがとな」
同じようににこりと笑ってくれた。
「私こそ。ありがとう…
とっても幸せ」
「弥生も喜ぶな」
兄弟が欲しいと言っていた弥生。
喜ぶ姿が目に浮かぶ。
「そうだといいな…」
「体、大事にしてくれよ」
「うん。ありがとう」
「やべぇな、すげぇ緊張するわ」
「えぇ?何が?」
いつもどんと構えている彼がそんな事を言うと
なんだか可笑しくなってくる。
「何とも言えねぇよ」
私のお腹を優しくさすって、
「早く生まれねぇかな」
なんて、あまりにも気の早い事を言う。
「俺すげぇ待ってたんだ。
出来たらいいって毎日思ってた」
「…そんなに?」
初めて知った彼の気持ち。
私はただ驚いていた。
「あぁ。弥生が兄弟を欲しがってたのもあるが。
俺自身が求めてた」
「……そんなに子ども好きだった…?」
「お前だからだよ」
見つめあって、絡まった視線が外せない。
熱のこもった瞳。
「私…?」
「あぁ、相手がお前だから。
子を成せば俺らの関係が深まると思ってた」
「…そう、かな」
「違うかな…。いや、子なんかなくても、
…俺らだけだったとしても全然平気だぞ?
でも、ないより、いた方がいい。
お前が大丈夫なら、俺は欲しいと思うんだ」
「うん。嬉しいよ」
「…よかった。愛してるよ睦」
そう言っておでこに唇を押し付けた。